ふと、1人の夜に、頬を伝う涙。
何か理由があるわけじゃなくて、でも何もないわけじゃない。
いろんなものが積み重なって、それが溢れているみたいな。
声を上げるわけでもない、顔を歪めて大泣きするような涙じゃない。
自分でもなぜ泣いているのかわからない。
みんな決定的な理由ではなくて、それ一つで泣いたのかと言われれば、違うけど
………よくわからない。
【涙の理由】
部活終わりに、2人で帰った帰り道。
『…あ、みて!今日は月が綺麗だね。』
月みたいにやわらかで…星みたいにキラキラと光るようなお前の笑顔が好きだ。
素直で優しいところが好きだ。
誰にでも分け隔てなくて優しい、お前が好きだ。
全部全部、大好きだ。
その言葉に、俺が思うような意味が隠されていないのも分かってる。
……今だけは、自分のもつ知識を恨む。
こんなこと知らなければ、こんなに胸が痛むことはなかったのにな。
『………死んでもいいよ、ってな。』
小さく呟いた言葉は、幸か不幸か届いてしまったようで。
『え、ちょっと、急に縁起でもないこと言わないでよ』
ほら、やっぱり伝わらない。
『…ばーか』
『なんで急に悪口!?』
抱いてしまったこの思いは、捨てられないんだろうな。
捨てる気もないけど。
ずっと、ずっと、空白だらけなんだ
私が歩いてきた道は。
足跡を残せたところなんて、ほとんどなくて
わずかに残せたところがあったって、しばらく経ったら ほとんど消える。
結果残るのは、何もない空白だけ。
裏にあったはずの努力とかは、意味がなかったものになり果てて、白で塗りつぶされる。
また結局何もできなかった、
その事実に、塗りつぶされる。
『空白』
雨の降る日、必ず誰かを思い出す
名前も、分からない誰かを
離れる時、君は言った
まだ一緒にいたいと、赤ん坊みたいに泣く
子供の頃の僕に。
『俺のことは忘れて』って、
その、大きな手で撫でてくれたことだけ
覚えてる
その顔は、涙にぼやけて見えなかった
まただ。
雨が降る日、必ず脳裏に浮かぶ、誰か。
その度、胸にぽっかり穴が開いたみたいな、
何か大切なものを、どこかに落としてきてしまったみたいな……そんな感覚がして
何か、とても…大切なものを、忘れてしまったような気がする。
……あ、もう仕事の時間…早く行かないと
…………………いつか、思い出せれば、いいな
『雨と君』
進むべき道を指し示してくれるとか
何をしたらこの道だとか
細かく何かが教えてくれるわけがない。
そんな便利なものがあったら、みんなそれに頼って依存して生きてる。
結局そんなものはただの夢見事で、実際は自分が思ったように動くことすらままならない。
いくら自分の心が行きたい場所を指し示したって、結局それを抑え込むのも自分自身だから。
『心の羅針盤』