寂しさ

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9/25/2023, 2:43:49 PM

物に謝ることがあるんだ
私の元へ来てごめんなさいって
物に謝ることがあるんだ
怒鳴り声聞かせてごめんなさいって

どうしようもないくらいに疲弊し切った毎日だ
ベッドの上で起き上がる事すらできず
ひたすらに液晶と見つめ合って
もしあなたと恋人だったなら笑っちゃうね
きっとバカップルなんだね

幻想にしかすぎない
思い描いた日は灰被り
そんな昨日も土砂降り
君は私のブレスレット、気づいたかな

執着したくてされたくて
迷惑なんて分かってるよ
でも君が忘れないならそれでいい

世界が回って溶けていく
あなたがしあわせ濁してく
私はそれがしあわせだから

全部ゴミ箱へ戻そう
私の中身と最低な苦味

雨が降っている土砂降りの
まだ窓は歪んで私がわからない

反射 反射 反射

荒れた部屋、整わない髪
散らかった薬のシート
今の自分


———————
お題 窓から見える景色

8/26/2023, 2:57:33 PM

祖父が亡くなった。
今思えば碌でもない人だったと思う。
祖母にあたり、タバコがないと暴れ、人の家の木は勝手に切り始める。挙げ句の果てには上裸でスーパーのトイレに行ってしまう。家のトイレは汚くなるから使いたくないんだそうだ。そこまでの潔癖症だと、最早家のトイレがなんのためにあるのか分からない。
そんな碌でもない祖父が亡くなった。
涙は、出なかった。
それからは祖母と母は忙しそうにしていたが、私はというと、まだ祖父がいなくなってしまった実感がなくただひたすらにぼーっとするだけの日々を送っていた。
葬式では冷め切った揚げ物とパサパサになった寿司を何も考えず頬張った。
家族葬でよかった。体がこわばって食べられなくなってしまいそうだったから。
姉の目がパンパンに腫れ上がっていて、明日の浮腫みすごいんだろうなとどこか他人事の様に考えた。
祖母はあんなに酷い扱いを受けていたが、やっぱり長年寄り添ってきた事もあって何か感じる事があったのだろう。静かにハンカチで目元を覆っていた。
食事が終わって儀式は進み、副葬品を棺に入れることとなった。
私は折り紙で作った背広とネクタイを祖父の顔の横にそっと置いた。
本当に亡くなったのだろうか。とても安らかに眠っている様に見える。それが永遠とは思えないほどに。
祖母は祖父が使っていた手帳を納めるようだった。
「これにね、今日は来た、来なかったって毎日毎日書いてたのよ。」
「.........来た、来なかったって誰が?」
私は祖母に尋ねた。
祖母は私と姉を見て、
「そりゃあなた達に決まっているでしょうよ。毎日欠かさず書いていたわ。来ない日が続くと、おい孫達はいつ来るんだなんてうるさかったんだから。」
祖母から手帳を渡された。...開いてみろということだろう。
私はゆっくりページを捲った。
その手帳は日記のようになっていて、普通は予定を記入するところに一言ずつ綴ってあった。
だが、私達が訪れた日だけは違って、字が枠からはみ出そうなほど記入がされていた。
ああ、なんだこんなにも、こんなにも大切に想われていたのか。
私は目をしばばたたかせながら、なんとか最後のページまでたどり着いた。
すると手帳のポケットから、ひらり。と何かが落ちるのがわかった。
拾い上げてみるとそれは一枚の古い紙で、所々変色していた。大事に折りたたまれているそれを開いてみた。
いつ描いたのだろう。クレヨンで「おじいちゃんありがとう」と汚い字で書かれていた。その下には下手くそな丸の集合体、恐らく祖父であろう人物が描かれていた。
「懐かしい。それ父の日にあんたと一緒に書いたんだっけ。クレヨンの取り合いになってお母さんに怒られた記憶あるから、よく覚えてるよ。」姉が覗き込んで来てそういった。
ぼとぼとと、床を私の涙が濡らした。私の事なんていつも興味なさそうにしていたくせに。あんなに碌でもないやつだと思っていたのに。その考えは一生変わることはないと思っているのに。どうして今更。
その手帳は日記だったのだった。大事な大事な想い出を閉じ込めておくための。
でもそれは祖父のものではなく、私達の、私の日記帳だったのだった。



8/25/2023, 4:45:53 PM

いつも乗る電車
私の向かい合わせに座る彼は相変わらず今日もぐっすりしている。
普通の少女漫画か何かだったのならここで恋が始まるんだろうけどそんなこともなく、私は大きなあくびをしながら単語帳へと視線を戻す。
...いかんいかん。こんなことしてる場合じゃなかったんだった。1時間目に英単語テストがあるのだ。
昨日は単語帳を開いた瞬間に寝落ちてしまって、何も暗記できていないのだ。ただでさえ勉強できないんだから、小テストの点数でさえ命取りになってくる。
まあ、こういうのは普段からチマチマやってくべきなんだろうけども。
私は再び向かいの涎を垂らして寝ている彼、大和田くんに視線を向けた。
大和田くん。私の隣席の生徒であり、朝は電車で同じになることが多い。電車内でこれだけ寝る癖に授業中までぐっすりなんだからどんな生活リズムをしているのかきちんと聞きたくなるレベルだ。
なんなら、テストの前のあのすこーしの休み時間でさえも睡眠に充てている。あの時は流石に、このお気楽フェイスが!!と思ったくらい。
でも不思議と勉強は出来る人で、いつも学年10位以内に入っているような気がする。やっぱり夜はちゃんと勉強してるんだろうなぁ。私とは違って。
とちょっとばかし憂鬱になっていると駅に留まった。
私は急いで単語帳をリュックに入れて早足で学校へ向かった。

いつも乗る電車
俺の向かい合わせに座っている彼女は相変わらず今日も焦って単語帳と向き合っている。
普通の少女漫画か何かだったのなら恋が始まったりすんだろうな。読んだことねえから知らないが。
大きなあくびをひとつして寝る体制に入る。いつもは寝ようと思ったらすぐ寝れるが、どういうわけか今日は寝付きが悪く、寝るフリをして彼女に視線を戻した。
月曜日から辛気臭い顔をしている彼女、早坂は俺の隣席の生徒であり、朝は同じ電車になることが多い。
授業は一度も寝たことありません!みたいな顔して毎回赤点か赤点スレスレの点数を取るもんだから、そのギャップがちょっと面白い。
しばらくすると早坂が慌て始めたので、俺も起きるフリをして電車から降りた。