華音

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8/28/2023, 2:15:22 PM

突然の君の訪問

机に向かって、ひたすらプリントと向き合う。
どう頑張っても、どう計算しても答えが合わない。そんなこんなで、数字が書かれた紙に向かい合って、もうどのくらい経っただろうか。
今日は全然勉強がはかどらない。この後ワークにも手をつけなきゃいけないし、レポートを作るための情報を集めなきゃいけない。
他にもやる事を思い出しただけで、憂鬱になってくる。
今日は青空いっぱいに広がるいい天気なのに。僕は一体何をしているんだろう。
僕は頭を抱えた。家の中で小さな机の上で、ため息を着く。
すると、突然僕の肩にふわっとした毛の塊が横を過ぎる。
この黒いフサフサした毛並み、狭い場所を器用に通る体。
ーー飼い猫のゴマだ。
ゴマは僕のプリントの上に我が物顔で乗っかってくる。まるで、ここは俺のスペースだとでも言うように。
「ゴマ〜……課題やるからどいてくれよ〜……」
僕はゴマの機嫌をとるように綺麗な毛並みを撫でる。しかし、ゴマはふん、と満足いかない顔をする。
……これは、ゴマなりの甘え方だ。
ゴマは気分屋で、意外と甘えたがりだが、「かまって」というアピールはしない。
代わりに、僕の作業を邪魔してくる。今回もそうだ。
本当は、課題もやらなきゃいけないけど……
「ゴマを優先しないとダメだな。」
僕はふっと笑って、ゴマを机からおろし、僕も椅子から立ちあがった。
突然の君の訪問。宿題をやらなきゃいけない僕にとっては不都合だったけど、君がいなきゃ僕は多分永遠に問題が解けなかったよ。

8/27/2023, 2:11:11 PM

『雨に佇む』

ざあ、ざあと雨が降りしきる。予報外れの雨で、同じクラスメイトは非難の声を上げる。
傘持ってきてないよー、とか、電車止まっちゃってる。そんな喧騒の中、俺はただ校門で灰色の空を見ていた。傘も持ってないし、帰れそうにない。
まだまだ止む気配は無さそうだ。しょうがないし、俺は教室に戻ることしよう。特にやる事もないし、自習でもしているか。
ーーと、ついさっきまで思っていたのに、今はどうだ。
彼女からひとつの傘、しかも折り畳み傘に2人で入ってバスを待っている。
雨はひどいし、しかも折り畳みだから体がより近くなる。
俺の体は少しはみ出るから、制服は思いきり濡れるし、
挙句の果てにバスは雨の影響で遅れている。
勘弁してくれ、そう思うのと同時に。
「……」
より近くで感じる彼女の体温。恥ずかしさを誤魔化すために話す他愛もないこと。
そんな事が、非日常的で。
もう少し、このままでいたかった。
まだ、バスが来ないで欲しかった。雨の中に、小さな屋根で肩をすり合わせていたい。
雨も、たまには悪くない。