華音

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『雨に佇む』

ざあ、ざあと雨が降りしきる。予報外れの雨で、同じクラスメイトは非難の声を上げる。
傘持ってきてないよー、とか、電車止まっちゃってる。そんな喧騒の中、俺はただ校門で灰色の空を見ていた。傘も持ってないし、帰れそうにない。
まだまだ止む気配は無さそうだ。しょうがないし、俺は教室に戻ることしよう。特にやる事もないし、自習でもしているか。
ーーと、ついさっきまで思っていたのに、今はどうだ。
彼女からひとつの傘、しかも折り畳み傘に2人で入ってバスを待っている。
雨はひどいし、しかも折り畳みだから体がより近くなる。
俺の体は少しはみ出るから、制服は思いきり濡れるし、
挙句の果てにバスは雨の影響で遅れている。
勘弁してくれ、そう思うのと同時に。
「……」
より近くで感じる彼女の体温。恥ずかしさを誤魔化すために話す他愛もないこと。
そんな事が、非日常的で。
もう少し、このままでいたかった。
まだ、バスが来ないで欲しかった。雨の中に、小さな屋根で肩をすり合わせていたい。
雨も、たまには悪くない。

8/27/2023, 2:11:11 PM