『私の当たり前』
【誕】意味:
1.子をうむ。うまれる。
2.でたらめを言う。でたらめ。また、でたらめを言ってあざむく。
みんながみんな信じてる
自分がいちばん正しいと
わからず屋なのはアイツの方で
自分はきちんと考えている
仕方がないから争うし
仕方がないから怒るんだ
みんながみんな善人で
自分がいちばん正しいの
生まれてきた日は祝うものだし
死んでしまったら弔うものだし
善人だらけの世界に落ちたら
死ぬまで争い生きてくものだし
私はきっと善人で
私はきっと正しくて
私がもしも悪い事をしたなら
それは仕方がなかった事なんだろうし
今日も何処かで誰かが祝う
誕生日
おめでとう!
……嫌な奴ですね
『世界の終わりに君と』
「「はじめまして」」
──初めて会ったその時から、僕は君のことが好きだったんだ。
──────────
「今日でこの世界が終わるらしいよ」
頬杖をつきながら君が言う。
心底つまらなそうな表情で、最近黒く染めた髪の毛を指でクルクルといじる君。
ぼーっとスマホを見るばかりで、視線をこちらに向ける気力もないようだ。
──よくある都市伝説の話題だろうか?
それにしたって楽しくなさそうだ。
少し考えを巡らせる。
「何か嫌なことでもあったかな?」
「別に……なんでもない。
ただ仮にこれが本当の話だったら、私とあなたは今日、いったい何をするのかなって。
……ほんの少し気になっただけ」
「そっか……そうだね、少し考えてみようか」
「そこまで真剣にならなくてもいいよ。
何となく思っただけなんだから」
君は少し躊躇いがちに僕を見る。
ようやく視線が重なって、それだけでじんわりと心が暖かくなった。
いつまで経っても僕は君が好きらしい。
「僕は君と話すのも好きだからね。
せっかくだから一緒に考えてみようよ。
それとも……あまり気分じゃないかな?」
「そんなことはない……けど」
「けど?」
「言い出しておいてなんだけど、やっぱり少し怖いかな。
私はあなたと過ごす今が幸せだから……それが終わっちゃうなんて嫌だよ」
そうしてまた目を伏せる君を見て、僕は愛おしさが込み上げる。
「……初めて僕達が出会った日のことを覚えてる?
お互いの挨拶が被ってしまって、気まずい空気が流れたよね」
「もちろん覚えてるよ。
あの時は緊張して……でも、私にとっては大切な思い出だから」
「僕も同じだよ。
あの日は僕"達"にとって大切な日なんだ」
──だから。
「仮に今日世界が終わったとしても、また次の世界であの日を繰り返せばいいんじゃないかな?
その後に今日の続きを過ごそうよ。
僕が生まれ変わったら、必ずまた君を見つけるから」
「……ありがちな台詞だね。
でもそっか……そう、ありがとう。
そういうことなら安心だね」
そう言って照れ臭そうに、君はにこりと微笑んだ。
──────────
『『はじめまして』』
──初めて会ったその時から、僕達はお互いのことが好きだったんだ。
『最悪』 210
もろびとこぞりて業を焼く
白いゼラニウムの花を
警告灯が朱色に染める
あなたの犠牲があって初めて
他人はあなたを求め出す
「止まれよ止まれ
止まりなさい」
『今さら何をおっしゃいますか』
揺れる花はチグリジア
気付いて欲しいとその身を捩る
雛鳥のように口を開けて
あなたは餌を待つばかり
『私を救って
助けて……お願い』
「今さら何をおっしゃいますか」
黒いカラスの羽が舞う
ノイズのように視界を覆う
無意味なものに気を取られ
観てないものが多すぎた
日が暮れた
気が触れた
湿った空気が
流れていった
もろびとこぞりて業を焼く
『止まれよ止まれ
止まりなさい』
『今さら何をおっしゃいますか』
『天国と地獄』
青空には沢山の魚が泳いでいて、近所のパン屋さんが毎朝、青空に向かって焼きたてのパンを放り投げるんです。
そのパンに群がった魚で雲ができて、パンを食べた魚はお腹が膨れ、感謝の涙を流します。
「ありがとう」
「ありがとう」
近所のパン屋さんは、とても凄い人なんです。
虹の滑り台で遊びたいと思いました。
星空の海を泳ぎたいと思いました。
沢山の人と友達になりたいと思いました。
小さい頃の友達はコオロギです。
捕まえては名前をつけました。
「太郎」
「次郎」
「花子」
「陽子」
最後はみんなが帰っていくのを見送りました。
私から逃げるように跳ねては、草むらへと消えていくんです。
寂しいけれど仕方がないんです。
友達だと思っているのは、自分だけなんですから。
夜空の月を観ました。
ドロリと輪郭が溶けていって、それは天の川になりました。
川を覗くと星達が泳いでいます。
月の周りで星達が感謝します。
「ありがとう」
「ありがとう」
これで月は寂しくありません。
昔から今まで、私はついに変われませんでした。
秘密主義で自己愛が強く、空気の読めない理想主義者です。
誰かに頼らなくても、何だかんだと生きていけます。
これまでだってそうでした。
人が楽しそうにしてるのを見るのが好きです。
……混ざろうとは思えません。
幸せそうに笑ってる人が大好きです。
……自分には無理でした。
たまに誰かと話したくなって、人里に下りてくる熊みたいに人と関わろうとします。
でも結局、その度に自分の爪や牙が誰かを傷付けてしまうんです。
何時だったか、私はあまり人とは関わらない方が良いんじゃないかと、白々しくそう思いました。
本当は昔から分かってたんです。
解ってたんですけどね。
何だか寂しくって……駄目ですね。
『風に身をまかせ』
線香の煙がたなびいては消えた
風に揺られては薄くなっていく
「記憶に残った、あなたの顔みたいだね」
線香の煙が立ち上っては消えた
風に揺られては散らばっていく
「記憶に残った、あなたの声みたいだね」
写真のあなたは変わらないから
幾年経っても変わらないから
毎日わたしは線香をあげる
あなたの為のおくりもの
線香の煙が私を巻いては抱きしめる
風に揺られては身をまかせていく
「忘れちゃった、あなたの温もりみたいだね」