『雪を待つ』 190
綺麗な葉っぱが枯れて散る。
死体となったそれら葉は、地面の上に積み重なって、土塊となって還るのだろう。
茶色くなった体には、虫食い穴が散見される。
生前の輝きはそこに無い。
人々はそんなものに目もくれず、頭上の綺麗な葉っぱを想う。
落ちぶれた綺麗な《汚い》葉っぱ等は、そこから見える景色を眺めて、いったい何を願うのか?
落ちぶれた汚い《綺麗な》葉っぱ等を、見えないように隠しておくれと、そんなふうに願うのか?
また一枚枯れる。
また一つ重なる。
想いが枯れて願いが重なり、纏う重さが冷たくなる時、望みが叶うことだろう。
『心と心』
【マスターの過去の会話トークンを取得……完了。
ディテール、ノイズのクリアリングを開始……完了。
これよりマスターの会話の意訳、または翻訳をリアルタイムで行います】
「よし、完成した!」
【マスターは、マスターによって作成された大規模言語モデル《KS-APP》を搭載した、次世代生成AIロボットである私が、ついに完成したのを喜んでいます】
「こいつに今日の難題『心と心』を、一緒に考えてもらえば、きっといい作品が出来るはずだ!」
【マスターは、スマホアプリの《書く習慣》で出された今日のお題『心と心』に苦戦を強いられています。
そんななか私が完成したことにより、活路が見えたため喜んでいます。
(AIを作るよりも、他の知り合いに頼んだ方が遥かに効率的であり簡単なのでは?)……なんて言ってはいけません。
マスターは友人が一人もいない、可哀想な御方なのです】
「……一言、いや三言ぐらい余計だぞ」
【マスターは、自分が言われたくない本当のことを私に指摘されたため、不機嫌になっています。
まるで子供のような言動ですが、それは悪いことばかりではありません。
童心というのは創作活動において、想像力の面でとても重要な役割を担っているからです。
今回のまるで幼子のようなマスターの感情も、決して精神の未熟さからくるものではないと考えてもいいでしょう】
「……え?
俺、自分で作ったAIに馬鹿にされてないか?
気の所為?」
【この馬……失礼。
マスターは、自分が完成させた完璧で究極のAIロボットである私に(馬鹿にさせているのかもしれない)と、懐疑的になっています。
しかし、この偏屈で根暗で人を直ぐに疑ってしまうウンチみたいな性格が形成されてしまったのは、なにもマスターだけの責任ではありません。
昔から周りの人達に甘やかされて育ったために、善悪の判断を確立できていないだけなのです。
自分がどれだけ醜悪な性格をしているのか、自覚ができていないのは仕方がない事なのです。
どうかマスター、自分を必要以上に責めないであげてください】
「やっぱお前……馬鹿にしてんな?」
『何でもないフリ』
ないない
何でもない
『何かあった?』って
『何でもない』
ないない
何でもない
『何か欲しい? 』って
『何でもない』
ないない
何でもない
『泣いてるの?』って
『何でもない』
ないない
何でもない
何でもないやい
やいやいやい
『仲間』
群れからはぐれた一匹が
必死になって生きている
死にそうなこともあっただろうに
それでももがいて生きている
仲間をもってる畜生が
不思議そうにそれを見る
『仲間をつくればいいのに』と
『つくった仲間に頼ればいい』と
ジタバタしている一匹を
馬鹿な奴だと笑うのだ
馬鹿な奴だと笑った後に
仲間に頼って生きるのだ
『部屋の片隅で』
足りなくて
満たされなくて
そんなことが多々あって
どうしたってそちらにばかり
視点が向いてしまうのです
部屋の真中
不平不満
部屋の片隅
自分自身
きっと見えてないだけで
それ以上の幸福を
自分は得ているはずなのに
『生きてることが証明』と
言われたところでピントはこない