『大空』
僕の足元には大地が無い。
上下左右、どこを見渡しても青空が広がっている。
「地に足つけてる感覚はあるんだけどなぁ」
不思議だ。
取り敢えず歩いてみる事にした。
トコトコトコトコ
歩く度、足裏には確かに地面を踏みしめている感触がある。
これで足元に広がっているのが青空だというのだから驚きだ。
ある程度歩いた所で立ち止まる。
周りを見渡すが何も変わらず、やはり青空がそこには広がっていた。
そうして途方に暮れていると、少し離れたところに小さい雲があるのを見つけた。
「……あそこまで行ってみようか」
目的地を定めた僕はそこに向かって走り出す。
ダッダッダッダ
走る。
ダッダッダッダ
ひたすら走る。
ダッダッダッダ
……たどり着かない。
どれだけ走っても僕と雲の距離は縮まらない。
まるで、表面に青空が投影された球体の中を走っているみたいだ。
いや、事実そうなのかもしれない。
僕の周りに広がる青空は、何処までも続いているように見えているだけなんだ。
大空に見えてその実、僕を小さな世界に閉じ込めている牢獄なんだ。
考える。
「どうすれば此処から抜け出せる?」
考える。
「何時から僕は此処に居た?」
考える。
「一体誰が僕を閉じ込めた?」
…………分からない。
分からないが、取り敢えず……
僕は足元の小空を、力の限り踏みつけた。
『ベルの音』
シャンシャンシャン
ベルが鳴る
「迎え入れるのだ」
シャンシャンシャン
ベルが鳴る
「賛美歌を捧げるのだ」
シャンシャンシャン
ベルが鳴る
「幸福を願うのだ」
シャンシャンシャン
ベルが鳴る
「神を崇めるのだ」
シャンシャンシャン
ベルが鳴る
「崇めるのだ」
シャンシャンシャン
ベルが鳴る
「崇めろ」
シャンシャンシャン
ベルが鳴る
シャンシャンシャン
ベルが鳴る
『寂しさ』
私が消えたところで
誰も寂しさなんて感じ無い
誰かが消えたところで
私は寂しさなんて感じ無い
今も昔も孤独な私は
きっと誰よりも人思いだろうよ
『冬は一緒に』
あぁ寒い
息も白いし
手だってかじかんでる
水を使えば痛いぐらいで
指先なんて氷のよう
痛痒い霜焼けがいつまで経っても治りやしない
なぁ冬よ
お前だって寒いだろう?
意地の張り合いなんて辞めだ辞め
お前の寒さを無くしておくれ
私の震えを無くしておくれ
私とお前で暖まろう
私と一緒に春を待とう
『とりとめもない話』
人を騙すのは?
悪い事だね。
人に暴言を吐くのは?
悪い事だね。
人を殺すのは?
悪い事だね。
人が敵に変わったら?
当たり前だね。
そんな事より昨日のテレビ観た?