『大空』
僕の足元には大地が無い。
上下左右、どこを見渡しても青空が広がっている。
「地に足つけてる感覚はあるんだけどなぁ」
不思議だ。
取り敢えず歩いてみる事にした。
トコトコトコトコ
歩く度、足裏には確かに地面を踏みしめている感触がある。
これで足元に広がっているのが青空だというのだから驚きだ。
ある程度歩いた所で立ち止まる。
周りを見渡すが何も変わらず、やはり青空がそこには広がっていた。
そうして途方に暮れていると、少し離れたところに小さい雲があるのを見つけた。
「……あそこまで行ってみようか」
目的地を定めた僕はそこに向かって走り出す。
ダッダッダッダ
走る。
ダッダッダッダ
ひたすら走る。
ダッダッダッダ
……たどり着かない。
どれだけ走っても僕と雲の距離は縮まらない。
まるで、表面に青空が投影された球体の中を走っているみたいだ。
いや、事実そうなのかもしれない。
僕の周りに広がる青空は、何処までも続いているように見えているだけなんだ。
大空に見えてその実、僕を小さな世界に閉じ込めている牢獄なんだ。
考える。
「どうすれば此処から抜け出せる?」
考える。
「何時から僕は此処に居た?」
考える。
「一体誰が僕を閉じ込めた?」
…………分からない。
分からないが、取り敢えず……
僕は足元の小空を、力の限り踏みつけた。
12/21/2022, 12:55:49 PM