ノーム

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11/1/2022, 1:51:06 PM

『永遠に』


上を見る
自分よりも優れた人間達がいる

「あいつらは運が良い」


下を見る
自分よりも劣った人間達がいる

「あいつらは努力が足りない」


自分を見る
誰よりも報われない人間がいる

「自分は努力をしているのに運が悪い」


それはまるで合わせ鏡のように
何処までも何処までも続いていく

10/31/2022, 1:15:53 PM

『理想郷』


ここは理想郷

何もかもが健全で、全てが平等な世界

ここに醜さは無い
ここに美しさは無い

ここに否定は無い
ここに肯定は無い

ここに不幸は無い
ここに幸せは無い

……ここに人間は居ない

残されていた古いビデオテープを再生する

ボサボサの髪をして、やつれた何かが映った

『……俺はずっと此処にいたぞ』

ボロボロのTシャツにヨレヨレのジーンズ

『俺はずっっと此処にいたんだぞっ!!』

血走った目でこちらを睨み

『こごにぃっ!!ずっどいだんだぁっっ!!』

握りしめた拳からは血が流れ

『……おれ……はぁ、ここにぃっ!!』

口からは砕かれた歯がこぼれ落ちる

『っうわぁあああっっ!わぁああっっ!!ぁああああっっ!!!────』

何かの叫喚だけがそこにあった

10/30/2022, 11:36:21 AM

『懐かしく思うこと』


テレビを付ける

ファミコンを付ける

ゲームはドラゴンクエスト

コントローラーで操作する

テレビの中の自分が動く

セーブをする

ファミコンを切る

テレビを切る

寝て

起きて

また繰り返す

冒険の書があるかぎり

それは変わらず

懐かしく思うこともない

10/29/2022, 12:45:10 PM

『もう一つの物語』


──物足りない。

あれも足りない、これも足りない、それも足りない、足りない、足りない、足りない。

スクリーンに映る物語に不満ばかりが溜まっていく

足りないものばかりの駄作だ。

誰だこんな映画を作った馬鹿者は、今どき小学生ですらもっとマシなものを作れる。

何なら私が同じタイトルで、もう一つ別の映画を作ってやっても良いぐらいだ。

そう心の中で吐き捨て、その場を立ち去ろうとするが身体が動かない
それならばと、目を閉じてしまう
しかし瞼の裏にまでその映画が流される始末

つまらない人間のつまらない物語。
主人公は最後、死ぬ時にこう言うのだろう。

『満たされない人生だった』

……あぁ、なんて在り来りな設定だ。

本当は分かっていた、解っていたはずだ。
この映画は私の人生だ、この駄作だけが私の人生なのだ。

人生に、もう一つの物語なんてものは……無い。

10/28/2022, 1:12:41 PM

『暗がりの中で』


──コロナウイルス感染者が……ぐしゃっ

──人種差別による……ぐしゃっ

──性的マイノリティの権利は……ぐしゃっ

──大国同士の戦争に……ぐしゃっ

ぐしゃぐしゃ、ぐしゃっ


……今日は運が良い。

日課となっているゴミ捨て場の散策をしていたら、沢山の新聞が纏めて捨てられているのを見つけた。
新聞紙はよく燃える、暖を取るには最適だ。

人気のない橋下、一斗缶の中で燃え盛る炎に、丸めた新聞紙を放り込む

一つ、また一つ

最近だんだんと寒くなり、日が暮れるのも早くなってきた。
火をおこした時はまだ明るかった気がするが、今ではもう真っ暗だ。

……そうか、冬が来るのか。
ならば何かしらの対策をしなければ凍えてしまうだろう。

そういえば最近知り合った男が、刑務所で冬を越せたと自慢げに語っていた。
そこでは雨風を凌げるのは勿論、飯も出て、そして何より人権とやらがあるらしい。

刑務所の入り方ぐらいは知っている、犯罪を行なえばいいのだ。
善は急げと言うし、思い立ったら早めに行動した方が良いだろう。

ではさっそく、

「コンビニのお握りでも盗みに行こうか」


暗がりの中、無表情な人間の顔だけが揺れていた

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