『暗がりの中で』
──コロナウイルス感染者が……ぐしゃっ
──人種差別による……ぐしゃっ
──性的マイノリティの権利は……ぐしゃっ
──大国同士の戦争に……ぐしゃっ
ぐしゃぐしゃ、ぐしゃっ
……今日は運が良い。
日課となっているゴミ捨て場の散策をしていたら、沢山の新聞が纏めて捨てられているのを見つけた。
新聞紙はよく燃える、暖を取るには最適だ。
人気のない橋下、一斗缶の中で燃え盛る炎に、丸めた新聞紙を放り込む
一つ、また一つ
最近だんだんと寒くなり、日が暮れるのも早くなってきた。
火をおこした時はまだ明るかった気がするが、今ではもう真っ暗だ。
……そうか、冬が来るのか。
ならば何かしらの対策をしなければ凍えてしまうだろう。
そういえば最近知り合った男が、刑務所で冬を越せたと自慢げに語っていた。
そこでは雨風を凌げるのは勿論、飯も出て、そして何より人権とやらがあるらしい。
刑務所の入り方ぐらいは知っている、犯罪を行なえばいいのだ。
善は急げと言うし、思い立ったら早めに行動した方が良いだろう。
ではさっそく、
「コンビニのお握りでも盗みに行こうか」
暗がりの中、無表情な人間の顔だけが揺れていた
10/28/2022, 1:12:41 PM