あの頃の私へ
歌が聴こえる。懐かしいあの歌が。
歌っているのは私。いつかの私。
世界の大スターみたいに、声をめいっぱい響かせて。
いつもひとりで歌っていたから、誰にも届きはしなかった。
恋人に願った歌も、月と踊る歌も。
今なら届く、たくさんの星に。
輝く星々に手を差し伸べて、願いを歌う。
私、なったよ。あの日焦がれた、輝く星に。
君の目を見つめると
君は、いつも夢に大して真剣だったよね。目を見れば分かる。けれど、分からないこともあった。
どうして僕と一緒にいるんだい?
分からない。分からないから、思い切って聞いてみることにした。
「君と、一緒にいたいから」
返ってきた言葉の意味を知ることは叶わなかった。
バカみたい
これで何回目だろ……。
何度かいてもだめ。仕上がらない。
締め切りがあるものではないのに、微かな焦りが顔を出す。
「まただ……」
何をかいても納得できなくて、結局無かったことになってしまう。
何をかいても意味が無い。何も生み出せない。何も上手くいかない。
というか、生み出したところで何になるの?
また思い至ってしまった。
そんなことは考えないと、決めたばかりなのに。
その瞬間、何かがぼきりと折れる音がした。
……なんだ、バカみたい。
少し冷えた両の手を見つめたまま、しばらく動けなかった。
――――――
バカみたい
一方的に愛してる
どう足掻いたって、隣にいられることなんてないのに
勇気もないのに嫉妬して
受け止めてくれる相手に甘えて
向こうが愛を返すことなんてないのに
私以外の生徒といる時の方が、楽しそうにみえる
私のことはスキ?
二人ぼっち
いつもこうだ。
結局キミしかいない。
不条理
どうして、どうして……
貴方のことを一番に想っているのは私のはずなのに、どうしてあの子たちの方が貴方に近づいているの?
冷静に考えれば分かる。
貴方に近づく勇気が無かっただけ。ただの努力不足。それだけで済む話だ。
それでも、不条理を感じてしまう。
あの子たちが羨ましい。
貴方にもっと近づけた、あの環境が……。
大好きだから、貴方の姿をもっと見ていたかった。
大好きだから、貴方のことをもっと知りたかった。
そんな、愛する貴方とは……今日でお別れだった。
教室を覗いて見えた景色。あの子たちがいる。貴方がいる。
……やっぱりあの子たちが羨ましい。
それでも、悔いは無かったと言いたい。だって……
貴方のことを、心ゆくまで愛せたのだから。