大空に向かい、手を伸ばした。
見えない何かを掴もうと、
ただ、分からずのままに。
晴天の日も、鉛雲の日も、
黒雲の日も、雪雲の日も、
何故かは、私にもわからない。
でも、何かがあるという
漠然で、直感で、空想な、
そんな気持ちが、
あの大空へと手を伸ばす。
今も、大空へと手を伸ばしているのならば、
私はまだ何かを求める旅路の中に
ただ、彷徨い続けているのかもしれない。
私の大空への旅路は、
始まっているのか、停滞しているのか、
未完なのか、終了なのか。
彷徨う私には、それすらも分からない。
甲高く、家のベルが鳴る。
それは、友達が来た事を告げる音。
静かに、玄関のベルが鳴る。
それは、親戚が来た事を告げる音。
ゆっくりと、家のベルが鳴る。
それは、久しく懐かしい友達が来た事を告げる音。
堂々と、玄関のベルが鳴る。
それは、酔った父が帰ってきた事を告げる音。
ただ高く、アパートのベルが鳴る。
それは、見知らぬ勧誘が来た事を告げる音。
単調に、アパートのベルが鳴る。
それは、宅配便の届けを告げる音。
優しく、扉からベルが鳴る。
それは、母が差し入れを持ってきた事を告げる音。
点々と、玄関からベルが鳴る。
それは、唐突に友達が来た事を告げる音。
軽快に、家のベルを鳴らす。
それは…
私を待つ人に、帰った事を告げる音。
寂しさとは、
友達に忘れられた時に感じる事では無く、
一人孤独になった時に感じるものでも無く、
大切な人が居なくなった時にも感じず、
ただ、私を褒め、慰め、励ました、
父と母、兄弟、姉妹、祖父母、
アノ人が、居なくなって初めて、
心に途方も無く大きく、深く、暗く、
闇に等しい穴が空いた時にやっと、
感じるのです。
とてもとても、耐えられるものでは無い。
あの哀しみも、痛みも、寂しさも、
耐えると言うことは出来ず、
その悍ましい現実には抗えず、
自らも、その闇に委ねて
堕ちていく。
彼方まで見通せた世界は、
ソレによって、何も見えなくなる。
ただ、一面の白銀世界と化し、
新たな世界を見出す。
もとよりある世界を上塗りするように、
ソレはもとの世界を染め上げる。
あるものを一新し、
どこか悲しく感じるはずなのに、
私は、それがただ恋しくて。
ただ純粋に、あの白銀の世界が、
幻想的な風景が、私を魅了する。
あぁ、ただただあの雪が、
待ち遠しくてたまらない。
なにゆえに、あの光は
私にこんなにもの哀しみを
感じさせるのでしょうか。
まばゆい光は
心を温かく、顔を緩ませて
あなたを思い、身を焦がすほどに
私を熱くさせるはずなのに、
なぜ、こんなにも哀しいのでしょうか。
あの光は、
私には届かないほどのものなのでしょうか。
それとも、私の全てがもう
黒く、取れないほどに濁ったと言うのでしょうか。
あの光を、ただ純粋に受け止める
ただ無垢で、和やかな私に、戻りたい。