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10/18/2022, 10:01:22 AM

秋の晴れた日。
それでも冬の寒さを感じ始めた日。
一人暮らしを初めて慣れてきた今日この日に、私は愛犬を亡くした。
母が轢いてしまったらしい。

まだ、何も感じれていない。

6/21/2022, 2:50:21 PM

好きな色。それはきっと、ふとした時に目につく色だったり、思わず選んでしまう色だったり、そういうのが選ばれるんだと思う。

すると私が選ぶのはきっと決まって赤色なんだろう。みんなが炎の色と言ったり、夕焼けの色と言ったり、血の色と言ったりするけれど、大好きな彼に聞いてみて帰ってきた答えはいつも決まっている。

「そう言われると難しいんだよなー……あぁでも、俺の髪は赤だわ。」

そう笑っていう彼の髪の色を、私は知らない。でもきっと、彼の色ならばとても綺麗なんだろう。
オシャレと言って伸ばし続けるロングウルフの髪は、触ると少し硬いけれどサラサラとした肌触りだ。

私の瞳は、色を映さない。どこを見てもモノクロな世界は面白さを感じることは出来ない。だから1度でいいからみたいと思い続けていた。

「私、一番最初に見る色は赤色がいいな。」
「お!まじ?赤好きになってくれたの?俺と同じじゃん!」

昔彼は話していた。赤色とは人間が生まれて初めて近くする色らしい。
その時から自分はきっと赤色が好きだったのだろうと。だからこの髪の色もお気に入りなのだと。

「うん。私、赤色好きだよ。」
「……ふーん、そっか。」

そういえば、照れた時も人の頬は赤くなるんだったっけ。見てみたいな、赤くなった君の顔。きっと、今みたいに顔を背けてもわかるぐらいに変わっているんだろう。そうだったらいいな。



「ねぇ、こっち見てよ。」
「え?なに。」
「はい。プレゼント。」

ずいっと押し付けるように渡された箱に驚きながらも受け取る。両手の上に乗るくらいの横長い箱には、一体何が入っているんだろう。

「なんで急に?」
「え、忘れてるの?マジで……?」

指さされたカレンダーを見てみると、そこには十年記念と書かれた今日の日付にはなまるが着いていた。そういえば、今日で私たちが出逢ってから十年だった。すっかり忘れていたと思って不機嫌そうな彼を見つめる。

「開けてみてもいい?」
「うん。」

丁寧に包装を剥がせば、そこにはメガネがひとつ。オシャレで可愛いけれど、レンズの色がサングラスのようになっている。

「かけてみて?」
「う、うん。」

少し怖くて、恐る恐るかけてみると、世界がガラッと変わる。

「どう?」

私の顔をのぞきこんでくる彼の髪が私の方をくすぐる。
長い髪だからか、思わず私はその髪を手に取ってしまう。その色は、今まで見てきた灰色ではなかった。

「……赤?」
「そ。これが赤だよ、お前が好きな色。」
「……赤、見える…」

他にもあるぞ、と彼は窓を開けた。そこから見えたのは空の色、芝生の色、お隣さんの家の屋根の色。
初めて見る色に染まっていた。

「……え?え?」
「色盲用のメガネだよ。いつかプレゼントしてやろうと金貯めてたんだ。」

呆然としている私の隣で、イタズラが成功したと言わんばかりの表情で私のあとをついてまわる彼。気づいた時には私の両目からは涙が溢れていた。

「どうだよ。初めて見る赤色は」
「……うん、やっぱり、私、赤色が一番好き!貴方の色である赤色が大好き!」
「そ、そうかよ……」

始めてま正面から見た彼の顔は耳まで真っ赤に染って、それを恥ずかしそうに腕で隠す癖は見える前もあとも変わっていなくて、それでも色づいた世界で見える景色は何倍も素敵に思えた。

3/29/2022, 2:53:50 PM

真っ暗な街の中に私だけがたっている。
空には見たことの無い程の満天の星空。
砂漠に行くとこんな空が見えるのかなと思いながら、呆然と舗装された道をフラフラ歩く。

こんな状態で道に迷ったら、ろくな事にはならないのに、きっと大丈夫だと信じて歩いていく。

「ここはどこだろう。」

ほら、結局を持って迷ってしまった。
一体どこまで歩いてきたのか、自分でもよく分からない。きっとここは中学ぐらいだろうか、いや、でも方向的に小学校ぐらいの位置だろうか。
はたまた、位置情報を間違えて、高校まで来てしまったんだろうか。

わからない。私は一体、今どこにいるんだろう。

「……」

それでも、家に帰りたいとは思えなかった。
家が嫌いなわけじゃない。両親は間違いなく私のことを考えてくれて、悪い家出は無いはずだから。でも…でも、やっぱりかえりたくない。

「るい!」
「…………れん兄ちゃん。」

後ろから聞こえてきた声に、もはや、後ろなのかもわからずに振り返る。目の前に広がるのは闇と、満天の星空。一体私はどこを見ているんだろう。

だけど、本当に目の前までれん兄ちゃんが来てくれた時、私はやっとその姿が見えた。

「やっと見つけた。こんな時間に外に出るな。今は危ないんだから。おばさんたちも心配してたぞ。」
「……かえりたくない。」
「…なんかあったのか?おばさん達と喧嘩でもしたのか?」

手を引いて、おそらく家の方へ帰ろうとしてくれるれん兄ちゃんを、腕と足に力を込めて引き止める。理由なんてない、ただまだこのまま迷子でいたかっただけ。

「……何も無い。」
「そうか、ならもう少しだけここにいようか?」
「うん。」

そんな私の心境を、れん兄ちゃんはわかってくれたようにそこに立ち止まってくれた。
そして2人して空を見上げる。

しばらく空を見上げて2人とも黙っていると、ふとした時に帰りたくなった。
寒い、帰りたい、家出暖かいお風呂に入りたい。
そう思ってれん兄ちゃんの方を見ると、れん兄ちゃんは帰るか?とだけ聞いてくれた。

それにうなづいて二人して帰る。
これは既に何回目のことだろう。ただ、私がれん兄ちゃんといたいからここにいる、といったられん兄ちゃんはどんな顔をするんだろう。

「いつでも迎えに来てやるからな。」
「……じゃあ、私が大人になったら迎えに来てね。」
「おう!任せろ!」

きっと今みたいに照れたように笑ってくれるんだろうな