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真っ暗な街の中に私だけがたっている。
空には見たことの無い程の満天の星空。
砂漠に行くとこんな空が見えるのかなと思いながら、呆然と舗装された道をフラフラ歩く。

こんな状態で道に迷ったら、ろくな事にはならないのに、きっと大丈夫だと信じて歩いていく。

「ここはどこだろう。」

ほら、結局を持って迷ってしまった。
一体どこまで歩いてきたのか、自分でもよく分からない。きっとここは中学ぐらいだろうか、いや、でも方向的に小学校ぐらいの位置だろうか。
はたまた、位置情報を間違えて、高校まで来てしまったんだろうか。

わからない。私は一体、今どこにいるんだろう。

「……」

それでも、家に帰りたいとは思えなかった。
家が嫌いなわけじゃない。両親は間違いなく私のことを考えてくれて、悪い家出は無いはずだから。でも…でも、やっぱりかえりたくない。

「るい!」
「…………れん兄ちゃん。」

後ろから聞こえてきた声に、もはや、後ろなのかもわからずに振り返る。目の前に広がるのは闇と、満天の星空。一体私はどこを見ているんだろう。

だけど、本当に目の前までれん兄ちゃんが来てくれた時、私はやっとその姿が見えた。

「やっと見つけた。こんな時間に外に出るな。今は危ないんだから。おばさんたちも心配してたぞ。」
「……かえりたくない。」
「…なんかあったのか?おばさん達と喧嘩でもしたのか?」

手を引いて、おそらく家の方へ帰ろうとしてくれるれん兄ちゃんを、腕と足に力を込めて引き止める。理由なんてない、ただまだこのまま迷子でいたかっただけ。

「……何も無い。」
「そうか、ならもう少しだけここにいようか?」
「うん。」

そんな私の心境を、れん兄ちゃんはわかってくれたようにそこに立ち止まってくれた。
そして2人して空を見上げる。

しばらく空を見上げて2人とも黙っていると、ふとした時に帰りたくなった。
寒い、帰りたい、家出暖かいお風呂に入りたい。
そう思ってれん兄ちゃんの方を見ると、れん兄ちゃんは帰るか?とだけ聞いてくれた。

それにうなづいて二人して帰る。
これは既に何回目のことだろう。ただ、私がれん兄ちゃんといたいからここにいる、といったられん兄ちゃんはどんな顔をするんだろう。

「いつでも迎えに来てやるからな。」
「……じゃあ、私が大人になったら迎えに来てね。」
「おう!任せろ!」

きっと今みたいに照れたように笑ってくれるんだろうな

3/29/2022, 2:53:50 PM