「便りがないのが元気な証拠」
あなたの口癖だったわね。
老眼だってボヤいてる割には、スマホばっかり見て。
知ってるんですよ?
お休みの日に、犬の散歩だって言いながら
普段行かない公園まで足を運んでいること。
他愛もない写真を良く撮るようになったこと。
若い子の流行りを気にするようになったこと。
会話のきっかけを、探していること。
ゆみ、仕事はどう?一人暮らしやっていけそう?
困った事があったら、お父さんに連絡しなさいね
ああ見えて、結構心配性だから(笑)
5月の連休にそっちに遊びに行くので
3人でご飯でも食べましょう(^^)
無理せず、体に気をつけて頑張りなさいね。
御山の雪も土に被る程度まで溶けてしまった。
湿った土の下から新芽が芽吹き始めている。
風はまだ少し冷たいが、
薄い雲の間から射す陽の光が温かだ。
春ってやつが直ぐ側まできて、
煩わしそうにこちらを視ている。
「君はもう用済みだろ?さっさと退いてくれないか?」
もう僕の季節だ。
こいつとはいつまで経っても反りが合わないな。
「わかってる。」
他の植物に先駆けて咲いた木瓜の花を優しく撫でると
「またな。」
そう言って、冬は風に乗って去っていった。
御山に今年も、春が来る。
肩まで伸ばした地毛の黒髪を1つに束ね
控えめな化粧
服装は色味が少なく極めてシンプル
勤務態度は極めて真面目で特に目立った人ではない。
それが、会社での私に対する印象。
でも、それでいい。
平和に社会生活を送るのならば
印象に残らず、恙無く生活するのが一番いいのだ。
日曜日の夜
煙草の煙で燻る入口
小さなバーカウンター
重低音のサウンド
響くシャウト
ヴォーカルの煽りに
オーディエンスは掻き立てられ
モッシュ、ダイブで沸き立つフロア
キャパ100もない小さな"箱"
音に全てを委ねられる
生きていると実感できる
私が、私に戻れる
秘密じゃないけど秘密の場所
幸せとは
たとえば
「ありがとう」という気持ちの
向こう側にあるもの
いつもと同じ朝なのに
いつもと違う清々しさ
特別な挨拶が
今日が新たな1年の始まりだと教えてくれる。
去年は、色んな意味で怒涛だった
1月に初めての業種に転職をして
新しい事を覚えるのに必死になって
人生で初めて知恵熱を出した。
毎月、毎日、仕事をこなすのに必死で
がむしゃらに働いた。
その合間で、色んな場所に行かせても貰えた。
地元ではない場所で
普段と違う景色を見て、考える時間をくれた。
ここまで、大変な事も多かった。
苦しくなる事も多かった。
それ以上に、嬉しい事や楽しい事の多い1年だった。
心配をしてくれる家族や友達に
改めて、最大級の感謝を。
そして、12年前の自分にありがとうを。
1日が始まる事がただただ怖くて
息をする事も身体を動かすことも何かを思考する事も
全てが苦しくて、苦しくて苦しくて苦しくて
でも自分ではどうしようもなくて
毎日、自分に絶望しながら泣いていた。
産んでくれた人に、殺してくれと縋った。
そんな暗闇の毎日を
泣き喚いて、藻搔いて、這いずってでも
紡いでくれたあなたが居たから
今、笑えています。
心から、あなたに言える。
生きていてくれて、ありがとう。
この12年間、学びを与えてくれた総てに感謝をして。
もう一度、ここからだよ。