6B鉛筆

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御山の雪も土に被る程度まで溶けてしまった。

湿った土の下から新芽が芽吹き始めている。

風はまだ少し冷たいが、

薄い雲の間から射す陽の光が温かだ。

春ってやつが直ぐ側まできて、

煩わしそうにこちらを視ている。


「君はもう用済みだろ?さっさと退いてくれないか?」


もう僕の季節だ。


こいつとはいつまで経っても反りが合わないな。


「わかってる。」


他の植物に先駆けて咲いた木瓜の花を優しく撫でると


「またな。」


そう言って、冬は風に乗って去っていった。



御山に今年も、春が来る。







4/1/2025, 5:00:11 AM