#48 『ひなまつり』
とある市役所に雛人形が飾ってあるが、
横並びでズラっと並んでいる
「ねぇ、どうしてひな壇が一段だけで横並びなの?」
「格差をつけてはいけないとか、クレームがございますので」
「あと、…なんというか美しくないというか、微妙な顔だよね」
「それはルッキズムに配慮して、ワザとこのようにいたしました」
「それにお内裏様とお雛様が多くない?」
「それもLGBTも考えて…」
「…」
「あと、先ほど苦情がありましたので、来年は肌の色を白だけではなく、他の肌の色も増やす予定です」
#47 『たった1つの希望』
指揮官は若い軍兵に言った
「お前こそが、我が軍のたった1つの希望なんだ!」
「はっ!」
若い軍兵は覚悟を決めた眼差しで敬礼をする
「………」
副官は横で黙ってそれを見つめる
「よしっ!行ってこい!」
指揮官が命令を出すと同時に若い軍兵は咆哮しながら駆け出して行った
…
副官が遠くを見ていた双眼鏡を下ろしながら
「…また、やられましたね」
指揮官は閉じていた目をパッと開ける
「よしっ!次を連れてこい」
副官は無表情のまま
「はい、では46人目の希望を連れてきます」
#46 『欲望』
無の境地へと…
僧侶は静かな堂の中で
目を閉じ、座禅を組んでおった
…欲望、煩悩による苦しみから解き放つために
…何も欲せず、何も考えず…
……はて?
…何も考えず、となると、
このように何か思っているのはマズいのでは
そもそも“無の境地へ”と目指すことこそ、欲望ではないのか
すると、“死”することこそ無の境地なのか?
否、それも死したいという欲望だ
では、では………
私はどうしたら……
…もう、面倒じゃ!
と、
その僧侶は大の字で堂の床に寝っ転がった
そして考えるのを止めて、
ただただ、ぼぉっと天井あたりを見ていた
ただただ、ぼぉっと………
残念だが、彼は気がついていない
そして、気がつくこともあるまい
それが無の境地だということを
#45 『遠くの街へ』
遠くの街へ明日から旅立つ
全く縁もゆかりも無い土地だ
近くの店で今日は飲み明かそう
明日からは遠くの街となるこの場所で
#44 『現実逃避』
あの方のように
醜い顔で
太っていて
ダサい服を着て
誰からも愛されない
そんな風になってみたい
…という現実逃避をする
美しい顔で
スタイルがよく
何を着ても似合い
みんなから愛されて困っている
人
になってみたい