#46 『欲望』
無の境地へと…
僧侶は静かな堂の中で
目を閉じ、座禅を組んでおった
…欲望、煩悩による苦しみから解き放つために
…何も欲せず、何も考えず…
……はて?
…何も考えず、となると、
このように何か思っているのはマズいのでは
そもそも“無の境地へ”と目指すことこそ、欲望ではないのか
すると、“死”することこそ無の境地なのか?
否、それも死したいという欲望だ
では、では………
私はどうしたら……
…もう、面倒じゃ!
と、
その僧侶は大の字で堂の床に寝っ転がった
そして考えるのを止めて、
ただただ、ぼぉっと天井あたりを見ていた
ただただ、ぼぉっと………
残念だが、彼は気がついていない
そして、気がつくこともあるまい
それが無の境地だということを
3/1/2023, 11:39:05 AM