#38 『0からの』
何も無い
無だ
まさしく0だ
俺は神に祈ったんだ
クソみたいな人生、0からのスタートをしたい
…、と
何も無い
誰もいない
俺の肉体すらない
ただいま考えている思考や気持ち、こころは残っている
すると、そのこころに誰かが語りかけてきた
『すまぬ、まだ残っていたものがあったようだな』
その言葉が終わると同…………
#37 『同情』
猛烈な台風が通り過ぎ、帰宅すると唖然とした。
自宅の屋根が吹き飛ばされていた。
近所の人が集まってきて、
「大変だわね」
「元気だして、何とかなるよ」
と口々に同情していく。
私は思った。
同情するならヤネをくれ!
おあとがよろしいようで
#36 『枯葉』
サクッ
仕事帰り、ボォっと歩いていた
足下を見る
枯葉だ
いや、バラバラになった枯葉だったものだ
すると、風がその足下を吹き抜ける
枯葉だったものは天へと舞っていく
私もつられて、顔を上げる
その刹那、ビルの合間に流れ星が走っていった
…明日は何か少しいいことがありそうだ
#35 『今日にさようなら』
目覚ましが鳴っている
9:00を過ぎていた
頭と目だけが起動しだす
カーテンが少し明るいから、たぶん朝だ
確か今日は休みだ
でも、特に予定がない
それに布団の温もり…勝てそうにない
『今日にさようなら』
私は自分の電源をオフにした。
#34 『お気に入り』
男「昨日は急に帰って、何か用があったの?」
女「…う、ううん。別に」
男「今日は僕のよく行くお店に連れてってあげるよ」
女「…えっ、どこ?」
訝しみながらも男について行く女。
男「ここだよ」
男が連れてきてのは、夜景の見える隠れ家的な天ぷらの美味しい日本料理店。
男「ここが僕のお気に入りのお店」
女「わぁ❤」
男「そう、いま『お気に入り』と『お店』に『お』をつけたよね。
これは敬語の一種で『美化語』って言うんだ。
『美化語』ってあまり聞きなれない言葉だよね。
『美化語』っていうのは、自らの言葉を飾るための敬語で、言葉を上品に美しく表すためのものなんだ。
例えば、このご飯の『ご』やお味噌汁、お茶、お酒、そして、『おいしい』も美化語なんだよ」』
女「……」
男「そして僕はキミの気持ちもお見通…」
女「帰りまーす」