「俺、役に立ってます?」
「立っているとも」
「さっきから誰も通ってないっていうか、この二日間誰も通ってないっていうか」
「誰がいつ来るか分からないだろ。その時のためにいるんだよ、お前は」
「はあ」
セミすら鳴り止む摂氏40度。
アスファルトは照り返し、地平線が滲むほどの陽炎が立ち上る。雑草でさえ灼熱の日差しに喘いでいるようだ。
ガラクタ売り。割れた陶器皿、くもったガラスの風鈴、歯抜けのミニ箒。そんなものがボロボロの木箱に雑然と入れられている。
割りのいいバイトがあるというからこのオヤジについてきてみたら、こんなものを人気のない田舎道で売るなんて。
唯一生えている木の日陰で、
【お題:誰かのためになるならば】
どうしたんだろう。
さっきまでへらへら喋っていたのに、ふと気づけば黙っている。吉野くんは分からないヤツだ。
制作中のビーズ刺繍から顔を上げると、彼は英単語ドリルを片手に持ったまま、窓の外をぼんやり見ている。
何見てるんだろう。
彼の視線を追ってみる。窓には彼の姿が映っている。
【お題:視線の先には】
近頃時間の流れが変わったと思うのは、私だけだろうか。
よく「情報化社会で時間の流れが早くなった」とか言われるけど、なんというか、それだけじゃなくて。
川の流れを思い浮かべてほしい。
上流から下流へ、過去から未来へ、一方向に流れるのは同じなんだけど。
例えば川の真ん中に岩があって、そこにぶつかった水が滞留して、池のように流れが止まっている部分があったり。
例えば雨が降り出して、違う流れが混ざったり。
過去とか未来とか、今とか、一緒に混ざって、流れていくときもあれば、どこかで滞留することもあって。
眠くなってきた。
なんかよく分からないや。
そういえば夢って、この場合どこの流れにあるんだろう。
【お題:私だけ】
なんでこんな仕事やってるんだっけ。
【お題:空を見上げて心に浮かんだこと】
これまでずっとそうしてきたのだ。今さら変えるわけにはいかない。
ベーコンと目玉焼きのトースト。厚さは6枚切り、ベーコンは伊東屋のお得パックのを半分に切ったもの。粗挽きの胡椒をふって。付け合わせはレタス。パリパリに限る。ドレッシングはニンジンすりおろし。飲み物は水。
「仕方ないでしょ。色々高いんだから」
【お題:これまでずっと】