地面に落ちていた桜の花びらが上へ吸い寄せられ、枝へ戻る。散っていたはずの桜が、みるみる満開へ戻っていく。
「いいのかなあ、こんなことして」
「うるさいな。ちゃんと話せば分かってくれるって
「ふうん」
使い魔の猫のマコマコは、どうせ怒られるよ、とでも言いたげに私を見上げる。
空を見上げる。上弦の月は静かに私の所業を見ている。
時間を戻しているのはこの学校の桜だけ。他のものは進んでいる。
一週間前に終わった卒業式も、その式に親友の友希ちゃんが来られなかったことも、私たちが春から違う学校に通うことになったことも、もう取り返しがつかない事実で。
私は後ろを振り返る。友希ちゃんは呆然と私と桜を見ている。
「美花ちゃん……これって、一体」
「行こ」
私は彼女の手を取る。
「卒業式、やり直そうよ。二人で」
「ボクもいますけどね」
マコマコが足にまとわりつく。
「はいはい」
再び咲いた夜桜は美しく、月光を含んで優しくひかる。
【お題:桜散る】
例えば「夢見る乙女」というと、窓辺で頬杖をついている少女。その目線は斜め上である。そんなイメージ、だよね?
例えば漫画で登場人物が何かを想像、あるいは妄想をするときも、その吹き出しは斜め上に出ることが多い。
極め付けは、「夢に向かって頑張ろう!」って言う時に指差すのは? 斜め上、だよね?
つまり、ええと何が言いたいかって。自分と夢との立ち位置って、斜め上じゃない? っていう。
そんな話をしながら斜め上を指さすと、彼は
「ほう、このあたり」
と空中を丸く囲んでみせる。
「今何が見えてるの、ここに」
「やめい」
私がのけぞると、彼はそれを追いかけてまた同じ位置を囲む。
「教えてくれないんだ」
「秘密だよ」
この彼と結婚する夢を見てるだなんて、当人には言えない。
【お題:夢見る心】
ハムスターが脱走する夢を見た。金属製のオリはどこも穴がないのに、何度も脱走する。
よく観察してみると、オリの間の細い隙間に体を滑り込ませて器用に外へ出ている。
私は針金を持ってきて、オリの補強を試みる。しかし、見ればなぜかハムスターの数が増えている。いつの間に。オリの中にも外にも増えていく。
【お題:神様へ】
どうせ楽しくない。分かっている。外に出たって何もいいことはない。
窓の外は快晴。憎らしいくらい。隣の公園は桜が見頃で、なんとも楽しげな笑い声が聞こえる。
卒業式に出られず、入学式へ出る予定もなく、宙ぶらりんのまま親と目を合わせることもできない私には、遮るもののない春の日差しはまぶしすぎる。
風が吹く。桜吹雪が舞い上がる。
開けていた窓の隙間から、花びらが一枚舞い込んできた。
春の日差しをたっぷり浴びたそれは小さな陽だまりのようで。
暗い部屋に、私と、花びら一枚。
風が吹き、花びらは踊るように私を外へ誘う。
【お題:快晴】
あとで書きたい、、、
【お題:泣かないよ】