地面に落ちていた桜の花びらが上へ吸い寄せられ、枝へ戻る。散っていたはずの桜が、みるみる満開へ戻っていく。
「いいのかなあ、こんなことして」
「うるさいな。ちゃんと話せば分かってくれるって
「ふうん」
使い魔の猫のマコマコは、どうせ怒られるよ、とでも言いたげに私を見上げる。
空を見上げる。上弦の月は静かに私の所業を見ている。
時間を戻しているのはこの学校の桜だけ。他のものは進んでいる。
一週間前に終わった卒業式も、その式に親友の友希ちゃんが来られなかったことも、私たちが春から違う学校に通うことになったことも、もう取り返しがつかない事実で。
私は後ろを振り返る。友希ちゃんは呆然と私と桜を見ている。
「美花ちゃん……これって、一体」
「行こ」
私は彼女の手を取る。
「卒業式、やり直そうよ。二人で」
「ボクもいますけどね」
マコマコが足にまとわりつく。
「はいはい」
再び咲いた夜桜は美しく、月光を含んで優しくひかる。
【お題:桜散る】
4/17/2024, 1:19:16 PM