onion cryer 330

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8/8/2025, 5:27:30 PM

12. 愛に入り浸る貪欲姫

私は賞賛の声が絶えない人気者になった。
確か半年前ベットについてからだったかな、
幸せに囲まれて愛に包まれて、そこから抜け出そうなんていう物好きはなかなかいないだろう。
ただ、さっき会った根暗な不細工だけが
「全部夢だよ、起きてよ」なんて言って私を皮肉ってる。
だから誰からも好かれるような笑顔のまま教えてあげた。
「どこも夢じゃないよ」って。
泣きそうなあの子はもっと不細工な顔して必死に
足元にしがみついてくる。汚いから蹴飛ばした。
「夢じゃないんだよ?あんたが醜いのも」
跳ね返って刺さった何かに気づかないふりして
空想の愛に浸っている。
歪んだ顔をしたあの子の額には半年前の私と同じ傷跡がある
首元には同じようなほくろがある。
けど今の私にはどっちもない。じゃあの子は、
けどこれは夢じゃないからどっちでもいい

8/6/2025, 1:36:39 PM

11. 苦い愛が注がれた たかが小瓶

あなたは「またね」なんて言っていとも簡単にわたしを世界に取り残しました。あなたは私に小さな小瓶を残して私の世界からいなくなりました。もうどこにもいません。
秘密基地にも、空の上にも、海の中にも、どこにもいません。
最初の頃は一緒に行こうと何度も何度も私の手を引っ張った
くせしてそれを拒んだ私なんかはこんなにも
容易く見捨てられるんですね。
拒み続ける私への憎しみがこの小瓶ってわけですか?
私はこの際もうどうすることもできません。
それも全て知っていましたね?
こうしてここから三ヶ月も動けない私は予想通りですか?
あんなにも楽しかった日々を泣けるほど愛おしく思っていたのも私だけだと今更気付いた私は馬鹿なんですね。最初からずっと選択肢なんて一つなのに何に怯えてるんでしょうね。ずっと選択画面で固まったままの私は誰から見ても滑稽でしょうに。
さて、この瓶には蓋がある。
私はこの蓋を開けられずにいた。そして今、目の前には蛇がいて、「私が開けよう」と立ち塞がって動かない。正直のところ、あの時こそはこの世界に執着してたものの、この真っ暗闇な世界に私はさらさら執着なんかしてないのだ。きっと何かが怖いけど、あの時の日々を、あなたを失くした今の方がよっぽど怖くて足がすくんでるだけなのだ。私は蹲ったまま蛇に小瓶を差し出す。
やっと私はあなたに殺されようと思う。会いに行こうと思う。



そう思ってたのにさ。
私の視界には真っ白で無機質な天井が見据えてる。
そこまで言ったらわかるだろう。病室?いつから?
ただわたしの横には次は小瓶の代わりにスマホがある。
そこには生きてた頃のあなたが残した音声メモの羅列だけが続いてる。日付はそこから3年と少し、そうだった。
私が見てたのはあなたが死んで後を追った私の妄想だ。
わたしの全てだったあの世界での日々がこんな一言で終わってしまうのが虚しくて何も出来ない。
ただこの音声を聴いたら全部が終わる気がして。
あの日の「またね」を真っ白な嘘にする気がして。
ただ泣いている。小瓶はもうない。
あの小瓶が口苦い良薬なんかじゃなくて、毒薬だったら
また会えたのに。なんて小言も矛盾してる.
きっと今でも難なく会いにいくことなんてできるのに。
けどまた覚悟が決まるまでには時間がかかりそうなんだ.
これを聴いたらきっともっとかかるだろう。
それなのに、声があまりに甘く優しいから
どうか、またねってまた笑ってくれよ。

8/3/2025, 3:54:21 PM

ぬるい炭酸と無口な君

8/2/2025, 12:33:34 PM

9. 差し出し先は今日のあなたで

昨日はあんなに愛してたのに、今は心の底から彼が憎い。
殺したいほど、憎くて憎いのに、
あぁ明日は結局また昨日の通り愛せてるのだろう。
明日の彼になら私だってこんな刺せないままのナイフひた隠しにして笑えるのに、愛せるのに。
今日の憎しみを殺して眠ってしまえばきっと明日は幸せだ。
だからこの一言を言えずにいる。このナイフを刺せずにいる。
彼が不安定になったあの頃からずっとずっと。
彼の波にさらわれた言葉は戻ってくる度鋭利になって
今、凶器として私の手に残ってる。
けど明日の彼が私にこの関係を終わらせてくれない。
いつまで?今日の彼はまた私のナイフを喉元に当ててる。

8/1/2025, 3:34:03 PM

8. 3Dシアターに1人溶け残る

運命だと思った。
運命だって錯覚に気づかないままでいたいと思った。

愛されたいと思った。
薄ぺらな恋の手前、3D眼鏡を掛けてでも愛を見たいと思った。

運命じゃないと知っていた。愛じゃないとわかっていた。
けど、会いたいと思った。
錯覚でも勘違いでもこれだけは本当に。

暑さに揺られて自己暗示も溶けゆく8月。
それなのに、〝心の底から君に会いたいと思った“

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