今日は、いいことが沢山あった。
朝の星座占いで一位だった。
ラッキーカラー・ラッキーアイテム共に、私の好きなモノだった。
通学中、美男子とぶつかってしまったが、彼の制服が私と同じ学校であることに気づいた。
HRに、同じクラスの転校生が彼であることを知った。
彼の席が私の隣になった。
私が彼への学校案内をすることになった。
楽しかった。
放課後、いつもの日課を受けていたら、彼が割って入って止めてくれた。
別にどうでも良かったけど、嬉しかった。
⸺だから今日は、いいことでいっぱいの、特別な日になると思っていたのに……施設へ帰ると、いつもの仕事が入っていた。
今日のターゲットは、〇〇町▽◎番地。
昨日来たばかりの新参者にして、前々から、ターゲット候補に上がっていた要警戒者。
そしてそれは、彼だった。
酷く冷淡な目は、昼間とは真逆の印象。
低く唸るような声は、彼の本性が垣間見える。
あぁ…そんな人だったなんて。
⸺今日は、特別な日だ。
初恋をして、その初恋相手を殺した、とっても特別な日。忘れないよ。
だって…この恋を、最初で最後のモノにするから。
【本業、暗殺者。副業、学生。】
じりじりと、己の身を蝕むこの暑さ。
風に揺れる木陰に入れど、ただの気休め。
されど、人とは単純。
思い込みで多少涼しく感じてしまう。
実際は、さほど変わらぬ灼熱だというのにな。
【暑さで唐突に語り始めた通行人】
暑さに茹だり、朦朧と。
頭痛の中で、思考する。
彼は誰?
あの子の秘密は?
あの結末は?
…結局、あまり覚えていなくて、別の案を採用する。
【作り手、夏の暑さでバグる】
「⸺っ…やっぱ、もう……おい、坊主」
「な、なんだよ兄ちゃん、疲れたのか? もうちょっとしたら村に着くから、ここで果てんなよ」
「ちげぇよ……ほれ」
「なんだよこれ……手紙?」
「この手紙を、いつか生まれる勇者に。届けろ」
「ゆ、勇者……? いつか生まれる…?」
「あぁ…そうだ。ずっと昔から…。この世界の未来を見た神様が、最後の力を使っていつかの勇者に宛てた手紙だ……無くすなよ?」
「はぁ!? オレみてぇな村人の子に渡すようなもんじゃねぇだろ!こういうのは、神殿とかで受け継がれるべきだろ!?」
「……一昔前、自分に都合がいい世界にしようと目論んだ馬鹿がいた。ソイツは自分が神になろうと思い、その手紙を葬ろうとした。ソレを、真に神に仕える真面目バカが、自分の召使いに託し、信頼できる人に繋げろと言った。⸺分かったか?」
「つまり…ソレが兄ちゃん?」
「ちげぇよ。俺も聞いて、繋げた側の人間だ……で、届けるか?」
「んー……オレ、そんなに頭良くないけど…今の、魔王様に仕えて、魔王様を喜ばせるのは、なんか違うって思ってる。だからオレ、届けるよ!」
「そうか…なら……よか⸺」
「⸺えっ!?ちょっ、に、兄ちゃん!?何で急に倒れて……オレ、誰か呼んでくるからっ、死ぬなよっ!!」
「(あぁ……そうか。俺は、届けられたのか…勇者に)」
【英雄譚には語られぬ、届けた者たち】
【オートモードの罠】
「このクリスタルを手に持って、”メイクアップ”と叫ぶリャン!そうしたら、あのクロソメンダーに対抗できるリャン!」
突然現れた怪獣に、妙な語尾の小動物。
日曜日の朝か、深夜アニメにありそうな、よくある展開。
叫ぶとか、嫌すぎるんだけど……この間にも、リャンリャンうるさく鳴かれている。ウザい、非常にウザい。
「あー、もう。分かった、分かった。叫べばいいんでしょ…⸺『メイクアップ』!」
そう叫んだ瞬間、桃色の謎空間に飛ばされた。
服は何処かに消え、真っ裸で桃色の光に包まれている。
⸺ピンクかぁ……ピンクかぁ……えリーダーポジ?
そんなことを考えながらも、身体は勝手に動き、衣装を身に着けていく。そして⸺
「⸺春色春風、桜色。魔法少年ミオウ。今宵、黒に桜を教えよう」
……まって、性別勝手に開示されたんだけど、酷くない!? え、嘘、自動で口上も言うのはなんとなく察してたけど、性別開示は酷くない!?