ソラを飛び、クウを蹴り、カラを捨て。
今私は、世界を飛び出す。
誰も知らない世を知り尽くす為に。
空を嫌う子供の前で、笑って飛び。
空気が毒と言ったバカに向かって、蹴り飛ばし。
心を無くした空っぽな愚か者を、道端に捨て。
なんの柵もない私は、世界の端から、飛び出す。
世界の端は、人類未踏の暗黒地帯。
目の前にある未知を前に、動かない理由が無い。
【冒険バカは何時でもバカ】
青い大空は、好きじゃない。
……笑うように、小雨が降ればいいのに。
だって、ずっとじっと、見てるだけだから。
空はずっと昔から、感情豊かな傍観者だ。
【冷たい空】
【私を見てくれるのは】
………さみしい。
雨と、地面だけが、私を認識している。⸺あ…服と、空気も、そうかな。
そう考えると、ちょっとだけ、気分が上がる。
ちょっとだけ、なんだけどさ。
車が走り去る。私の身体をすり抜けて。
私、何時になったら……この透明化を、制御出来る様になるのかな。人や人が触れているものから、干渉されなくなる、透明化を。
雨音だけが、私を慰めてくれている。
【ティースプーン一匙】
「憧れ」って、誰もが持てるモノだと思いませんか?
このお店は、そんな「憧れ」を、”ティースプーン一匙”だけ、みせる場所でございます。
例えば、『星空のドレスを持ちたい』という、憧れがあったとします。私共は、夜空から星の光を、ティースプーン一匙だけ掬い、ドレス全体にふりかけます。
⸺…えぇ、はい。確かに、本来の憧れとは、程遠いでしょう。だから、”ティースプーン一匙”だけなのです。
そんな、淡い夢でも叶えたいのでしたら、私共、”夢見る少女の魔法店”へ、ご来店下さいませ。
【可哀想に…】
「ちょ、まっ…て、ひっぱ、んないでよ!?」
「………」
「ちょっと、聞いてんの!?」
「……騒ぐな」
「なんっ…で、走んっ、のよっ!?」
「追われてる」
「はぁ!?だからって、見ず知らずの他人引っ張るとかお人好しなの!?」
「いや、違うが」
「はいぃ!?じゃあ何なのよ?!」
「囮だ」
「え…?ちょ、まっ」
「じゃあな小娘」
「待ちなさ⸺ちょ、誰よアンタたち!離しなさいよ!私は無関係よ!!!」