【思い出すとき大抵こんな感じ】
⸺バシャバシャバシャ
うーん…なんっだっけなぁ……。
⸺バシャーン!バシャーン!
アレじゃなくて……こうでもなくて…。
⸺ザバザバザバッ!
……えぇい五月蝿い!!!
誰だよ私の記憶の中を海の如く泳いでる輩は!!!!
『⸺私ね、一つだけ叶えたい願いがあるの』
そんな言葉を初めて聞いた時のことは覚えている。
だが私は、彼女の叶えたい願いを……忘れてしまった。
「おい竜神ユース!お前は、一つだけなら何でも叶えるんだろう?」
「あぁ、そうだ。其方は何を願うのだ?」
あぁ、また願いを持った者が私の元に訪れた。…此度は一体、どの様な願いを叶えさせるのだろうな。
「俺の願いはただ一つ…⸺俺様の師匠になれ、竜神ユース!」
「……は?」
「俺様は神なのだが、ほんの千年前に生まれたばかりの赤子同然な上、俺様自身の権能を持っていない。だからこそ、生まれはただの竜人でありながら、己が努力で神の座に辿り着いたお前の教えを請いたい!⸺さぁ願いを言ったぞ!叶えろ!」
……はは。馬鹿だ。バカだ、コイツ。でも、面白い。
あぁ、そうだ。欲に塗れた願いを叶えることより、この願いを叶える方が面白いことは、今私の前にいるバカでも分かるだろう。
「いいだろう。その願い、叶えさせてやる」
「よぉっしゃ!!!俺様はガベルだ!竜神ユース…いや、師匠!これからよろしく頼む!」
「…ふふっ。よろしくな、ガベル」
【その願いの果ては彼らに何をもたらすのか】
「…ぁー、えっと。あの」
「何か?」
「先生、正直にお答えください。転移魔法失敗しましたよね?」
「いやいやそんなまさかまさか……はは()」
「先生ほど高名な魔法使いがまさか…⸺壁にハマるのが成功と言い張るんですか?」
「………いやぁ。失敗、しちゃいましたね♪」
「楽しまないでください!!!どうするんですか!?今の私ら、師弟揃って城壁に上半身だけ出てる大マヌケですよ!?宮廷からのお仕事の時間までに出られる保証は無いんですよ!!!」
「……はは♪」
「だから、楽しむなぁ!!!」
【マヌケな宮廷所属魔法使いとして、数日間国の笑い話のタネにされたらしい】
ココロはわからない。
どうして目から水が出てくるの?
どうしてココロにそんな顔をするの?
どうしてココロは、こんなにイタイの?
ココロに刺されて、クルシイはずなのに。ニクイはずなのに。ココロのことを、抱きしめるのはなんでなの?
「⸺どれだけ時間が経っても。どんなに姿が変わっても。母親が自分の子供を間違えることはないさ……おかえりなさい、心」
……なんで、ココロの声は、出ないの?
【変わらない愛と変わる現実】
「⸺大丈夫か?」
「……ぅん」
「そうか」
いつもこうだ。いつも君に背負われて宿へと向かう。
情けないなぁ…ボク。
「お前は弱いんだから、オレに全部任せればいいんだよ」
ダメだよ…王様から勇者と認められたのは、ボクだから。ボクが頑張らないと。
「まぁ、リオがやりたいなら、何時でも手伝うからな?」
「うん、ありがとう…カナン」
あぁ…本当に情けないよ。
カナンはボクが居なければ今頃、いい旦那さんに嫁いで、子供を背負っていてもおかしくないのに。ボクが背負われているなんて……本当、君の背中は頼もしすぎるよ。
【カナンはTS転せ(((殴】