「⸺っ…やっぱ、もう……おい、坊主」
「な、なんだよ兄ちゃん、疲れたのか? もうちょっとしたら村に着くから、ここで果てんなよ」
「ちげぇよ……ほれ」
「なんだよこれ……手紙?」
「この手紙を、いつか生まれる勇者に。届けろ」
「ゆ、勇者……? いつか生まれる…?」
「あぁ…そうだ。ずっと昔から…。この世界の未来を見た神様が、最後の力を使っていつかの勇者に宛てた手紙だ……無くすなよ?」
「はぁ!? オレみてぇな村人の子に渡すようなもんじゃねぇだろ!こういうのは、神殿とかで受け継がれるべきだろ!?」
「……一昔前、自分に都合がいい世界にしようと目論んだ馬鹿がいた。ソイツは自分が神になろうと思い、その手紙を葬ろうとした。ソレを、真に神に仕える真面目バカが、自分の召使いに託し、信頼できる人に繋げろと言った。⸺分かったか?」
「つまり…ソレが兄ちゃん?」
「ちげぇよ。俺も聞いて、繋げた側の人間だ……で、届けるか?」
「んー……オレ、そんなに頭良くないけど…今の、魔王様に仕えて、魔王様を喜ばせるのは、なんか違うって思ってる。だからオレ、届けるよ!」
「そうか…なら……よか⸺」
「⸺えっ!?ちょっ、に、兄ちゃん!?何で急に倒れて……オレ、誰か呼んでくるからっ、死ぬなよっ!!」
「(あぁ……そうか。俺は、届けられたのか…勇者に)」
【英雄譚には語られぬ、届けた者たち】
7/9/2025, 11:52:27 PM