「俺さ、行かないで……って惜しまれるような英雄になりたい」
「…この現代社会じゃ無理だろ。異世界に召喚されるのを待ってろ」
心の友である親友に否定されてしまった。
悲しいなぁ…しくしく。
「⸺ワシは、行かないで……って惜しまれる英雄になれたかのう」
「死なないでって言われるような家族大好きおじいちゃんにはなれたんじゃないか?」
ワシの死に目にまで毒を吐いてくる親友…⸺ってちょっと待て、お主先に寿命迎えたじゃろ、もしやお主が天の国の案内役か?
【英雄志望と腐れ縁】
「お前、今なんつった?」
低く、怒りと驚愕が交じった声。
その声の主である木別は、目の前の彼を見ている。
「鶏弐お前、小麥や片久里を…珠子も捨てて、天父に行くのか……?」
出会ってから、数十分しか経っていなかったかもしれない。だけど彼らの仲の良さに時間なんて関係無かった。
「はい、木別さん。天父と木別さんの相性は、小麦や片栗、珠子殿よりは良くないと判断したため、今晩は…」
鶏弐は真剣な表情で木別を見つめる。
二人の心境は最早、第三者である我々の力でも読みきれないだろう。
「くっ……アタシを、捨てるんだろ?サッサッと行けよ」
「いえ、木別さん」
「な、なんだよ…?」
鶏弐は木別を真っ直ぐ見つめている。
そんな鶏弐に、木別は少し戸惑いながらも言葉を交わす。
「明日は、小麥や片久里、珠子と共に行きましょう。幸い、私は徳用サイズですから」
「へ……?」
間抜けとも言える、気が抜けた声。
「天父は、根サーズの方々のファンなのですが、お一人だとお恥ずかしいらしく、仕方なく」
「あ…」
木別は知っている。根サーズはとても万能で、どんな難題も持ち前の対応力で大抵こなしてしまう、有能集団だと。
「えと、その………兎も角、明日の晩は、皆で…行きましょう。同じ袋に入った縁ですから」
「⸺……ふっ、仕方ねぇな。鶏弐!」
*
「アホというか、トンチキ系の夢見ちゃった…風邪の後遺症かな」
目覚めた時、喉が渇いていたので水を飲みに流し台に向かう道中、先程まで見ていた夢を思い出していた。
今日と明日の晩御飯は、揚げ物かな。
そんな風に思いながら、登場人部たちの元の食材なんかを考えていく。
木別はキャベツ。
鶏弐は鶏肉。
小麥は小麦粉。
片久里は片栗粉。
珠子は卵。
天父は…天ぷら粉、かな。
根サーズは………根菜類?
人参とかジャガイモとかがメンバーに居るんだろう、多分。
「ていうか、パン粉ハブられてんのかな…?」
その日の昼食は、チキンカツ定食を注文して美味しく頂いた。メチャウマだったです。
【昨夜はとり天、今夜は唐揚げ】
『………』
見つめ合う。
「………」
目が、合う。
『………』
これは…目を逸らした方が負けだ。
相手は肉食獣のような、鋭い眼差し。
こっちは、愛玩動物のような純粋な瞳。
……………あれこれこっちが負ける?
『………⸺コヒュッ』
「え……え!?」
久々に帰還した我が故郷。私のお気に入りの場所に居た、隣の青い星から来たであろう知的生命体。
興味が湧いて、コンタクトを取ろうとしただけなのに……あろうことか相手は気絶してしまった。
⸺私はどうしたらいいんだい………?
【ワタシナカーマ、敵ジャナァーイヨ】
ようやく、手が届く。
他者を踏み台にしながら手を伸ばす。
届け、届け、届け。
やっと、届いた。これで私はこの、じご、くを、ぁ………”また”糸が切られ、最下層へと落とされる。
ここはいくつもの階層が存在する地獄。
時折現れる天の糸を登って地上を目指す、醜き亡者の群れを押し退け糸へと手を伸ばす、それが日常。
⸺あぁ…また最下層からやり直しか………。
地上は高く、いつも亡者を見下ろしている。
【地上を夢見る亡者の数は、両の手では足りない】
放課後って、学校に行かなければ真の楽しみが味わえないと思います。
【新たにハマったモノの情報量にパンクしてるんで今回はこれだけで】