やわらかな光。暖かく、包み込むような印象を受ける。
しかし、真っ暗闇の中だったら?
*
「なんで灯りを回復魔法使った時のエフェクトで確保してるんだろう」
とある洞窟。行くなら暗闇で火属性魔法か灯り魔法、松明などを持っていけと近隣の街の酒場や武器、防具屋で物凄く念押しされるのだが、この馬鹿⸺失礼、この女は街によらずに洞窟に行ってしまった。
ちなみに余談ではあるが、女はいわゆる転生者でもある……Tと、もう一文字つくタイプではあるが。
「回復魔法で灯りを確保してるから無いよりはマシ程度だし、そもそも回復魔法を使う為に自傷行為に走ってんの明らかに奇行なんだけど……はぁ」
なお、女が通った道には血がポツポツと落ちている。回復魔法を限りなくゆったりと発動させているが、いかんせん回復していくのでいずれ治る。治り切る前に傷をつける……の繰り返しで洞窟の奥へと進む。
女が洞窟の奥へと向かう理由。
それは、女は気付いていないが、この洞窟の主に魅了をかけられているからだ……食料目的で、だぞ?
「そろそろ、最奥かな……?」
やわらかな光⸺否、この暗闇の中に対しては心許ないとしか言いようがない光では……昼間に見ても怖いとしか言われない洞窟の主の姿を見たら、恐怖心しか無いだろう
第三者こと書き手だって怖いし。実体験してる女はこれ以上に恐怖を味わっているだろうな、ははは。
⸺その後女は、死に物狂いで逃げ、二度と冒険に出ないことを誓ったとか、そのまま洞窟の中を永遠に彷徨ったとか……色々な噂が広まっている。
*
「唐突に物語を考えろと言われ、お題を投げられた側の気持ち、分かる?」
なはは、知らん。
「このクソ上司が……まぁアドリブって難しいってことは再確認できたから、いっか」
君のそういうとこ、嫌いじゃないねぇ。
【エフェクトで灯り確保って、実際どうなんだろうね?】
『………』
見つめ合う。
「………」
目が、合う。
『………』
これは…目を逸らした方が負けだ。
相手は肉食獣のような、鋭い眼差し。
こっちは、愛玩動物のような純粋な瞳。
……………あれこれこっちが負ける?
『………⸺コヒュッ』
「え……え!?」
久々に帰還した我が故郷。私のお気に入りの場所に居た、隣の青い星から来たであろう知的生命体。
興味が湧いて、コンタクトを取ろうとしただけなのに……あろうことか相手は気絶してしまった。
⸺私はどうしたらいいんだい………?
【ワタシナカーマ、敵ジャナァーイヨ】
ようやく、手が届く。
他者を踏み台にしながら手を伸ばす。
届け、届け、届け。
やっと、届いた。これで私はこの、じご、くを、ぁ………”また”糸が切られ、最下層へと落とされる。
ここはいくつもの階層が存在する地獄。
時折現れる天の糸を登って地上を目指す、醜き亡者の群れを押し退け糸へと手を伸ばす、それが日常。
⸺あぁ…また最下層からやり直しか………。
地上は高く、いつも亡者を見下ろしている。
【地上を夢見る亡者の数は、両の手では足りない】
「あそこの……あの人、子供っぽくない?」
「わかる。あんな美人に擦り寄るクセに、やることはただ話して引っ付いて…ガキの交流かよ」
通りすがりで見てるだけの人間が、私の友達の悪口を言っている。友達は聞こえてる筈なのに、何でも無いように…いつもと変わらない態度で接してくる。
試しに聞いてみる。
「悪口、嫌じゃないの?」
「んー……そこまで。テメェ等何にも知らねぇじゃんって心の中で言うだけで”いや”が消えるから」
「そうなんだ」
ふふ、君は強いなぁ。
「⸺さん、そろそろお迎えの時間じゃないですか?」
え、あぁ…もうこんな時間。もう少し遊んでいたかったけど、お迎えに行かないと泣かれちゃうもんね。
「そうだね、私の可愛い可愛い長女ちゃんを迎えに行ってあげないと、泣かれちゃうかもしれないし。今日は買い物に付き合ってくれてありがとね、⸺さん!」
「こっちこそありがとう、私の天使ちゃん!」
天使って……私の本性、見抜いてたりするのかな。
私が、人間の革を被った異形の天使だってこと。
【新しい友達、天使ちゃん!】
放課後って、学校に行かなければ真の楽しみが味わえないと思います。
【新たにハマったモノの情報量にパンクしてるんで今回はこれだけで】