題:「窓越しに見えるのは」
私はいつも、故意に自分の部屋の窓を見る。それはあなたが見えるから。私と彼の家は隣で、部屋に関しては真正面。窓越しに見えるのは、いつもあなた。
彼とは同じ学校の同じ学年で、同じクラスだった。いつも優しくて、明るくて、友達もたくさんいて、誰とでも笑顔で接してて、、私の初恋の人。
あなたはいつも、黒いヘッドホンをしながらパソコンを見ている。そして私に気付くと、笑顔で手を振ってくれる。私はそんなあなたが大好きだった。
だから私は、放課後にいつも窓の外を見る。あなたと目を合わせるために。あなたに手を振ってもらうために。あなたの笑顔を見るために。
このつまらない日常の中で、毎日毎日、それだけが唯一の楽しみだった。
そのせいで今も、窓を見る癖が消えない。見れば涙が出ることがわかっているのに、無駄な期待が心をよぎってしまう。
昨年の8月、家のすぐそこで事故があった。その時、一番最初に気付いたのは私。見覚えのある男の人が、大量の血を流して倒れていた。
あなたは、もうこの世にいない。
いつも温かいあなただったのに、今は冷たくなって、お墓の中。
窓を見ても、あなたはいない。そんなの分かりきってる事なのに、もしかしたらあなたが見えるんじゃないか。また笑顔で手を振ってくれるんじゃないか。そう思って、今でも窓を見てしまう。
今窓越しに見えるのは、あなたがいつも使っていた黒いヘッドホンと、パソコン。
ーーーENDーーー
題:「子供の頃は」
「い〜れ〜て!」
髪の毛を高い位置で二つに結んだ小さな女の子が、三人の女の子達に笑顔でそう言った。
「い〜い〜よ!」
その女の子達も、笑顔でそう返した。
「無垢だなぁ…。」
砂場で仲良く遊んでいるその子達を見て、遥は微笑みながらそう呟いた。
遥は14歳。ある理由で学校には行っていなかった。ここは、遥の家の近くにある小さな公園。遥は昔から、この公園が好きでよく来ていた。
「懐かしいな…。私もあの子達くらいの時は、よくああやって仲間に入れてもらったっけ…。」
遥は懐かしげに、でもどこか悲しげな目をした。
「今の私がそんなことしたら、笑われちゃうもんね…。あの時も、そのせいでハブられちゃったんだろうな…。子供の頃は、あんなに仲良く遊んでくれてたのに…。」
そう言うと、遥は公園から出た。
「もう二度と、ここに来ることはないだろうな。さようなら、思い出いっぱいの公園。」
それが、遥の最期の言葉だった。
ーーーENDーーー
私は、濃く深い色が好きだ。
もちろん、パステルのような明るくふわふわとした色も実に魅力的だが、濃い色は、私の目を一瞬にして引きつける。
見ていると、、、なにか昔のことをふと思い出すような、そんな感じがするんだ。