オルカ

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題:「窓越しに見えるのは」

私はいつも、故意に自分の部屋の窓を見る。それはあなたが見えるから。私と彼の家は隣で、部屋に関しては真正面。窓越しに見えるのは、いつもあなた。
彼とは同じ学校の同じ学年で、同じクラスだった。いつも優しくて、明るくて、友達もたくさんいて、誰とでも笑顔で接してて、、私の初恋の人。
あなたはいつも、黒いヘッドホンをしながらパソコンを見ている。そして私に気付くと、笑顔で手を振ってくれる。私はそんなあなたが大好きだった。
だから私は、放課後にいつも窓の外を見る。あなたと目を合わせるために。あなたに手を振ってもらうために。あなたの笑顔を見るために。
このつまらない日常の中で、毎日毎日、それだけが唯一の楽しみだった。
そのせいで今も、窓を見る癖が消えない。見れば涙が出ることがわかっているのに、無駄な期待が心をよぎってしまう。
昨年の8月、家のすぐそこで事故があった。その時、一番最初に気付いたのは私。見覚えのある男の人が、大量の血を流して倒れていた。
あなたは、もうこの世にいない。
いつも温かいあなただったのに、今は冷たくなって、お墓の中。
窓を見ても、あなたはいない。そんなの分かりきってる事なのに、もしかしたらあなたが見えるんじゃないか。また笑顔で手を振ってくれるんじゃないか。そう思って、今でも窓を見てしまう。
今窓越しに見えるのは、あなたがいつも使っていた黒いヘッドホンと、パソコン。

ーーーENDーーー

7/2/2024, 8:32:16 AM