狼我-中性女子

Open App
8/10/2025, 9:45:38 AM

21 風を感じて

僕はもう残り少ない人生で今1番風を感じているだろう
高い高いビルの上
ネオンに輝く街を見下ろし
背中から飛び込む
背中からすごい風を感じながら
下へ下へ落ちてゆく
僕には少しこの世界は早かったみたい

8/6/2025, 11:06:34 AM

20 またね

「またね」
『さよなら』
はぁ、面倒くさ
そう思いさっきの女の連絡先を消す
ずっとすがってきて泣きそうだったから交換しただけ
今頃泣いててもどうでもいい
顔だけで寄ってきた女はみんな面倒だ
金だけ払わせてあとはさよなら
みんな「またね」なんて言うけどこっちからすれば一生さよならだ
『ただいまぁ』
家に帰り俺より小さい背中にハグをする
「おかえり どうだった?」
『いつも通り 奢らせて帰った』
「最低 クズ男じゃん」
『前から知ってるだろ
ねぇ、嫉妬しないの?』
「しない だって絶対帰ってきてくれるでしょ?」
『まぁ、さよならって言わない限りはね』
俺が唯一『またね』って言う相手
俺の居場所、俺の大好きな人

8/3/2025, 10:14:14 PM

19 ぬるい炭酸と無口な君
◇ほんわかBL注意◇

『うお、やべ』
ラムネを開けたら見事に噴火した
屋台のおっちゃんめ 絶対振っただろ
「、、、、」
ハンカチを無言で差し出される
『ありがと』
手を洗ってハンカチを借りる
借りたハンカチは当たり前のように僕のカバンに入れる
洗って返すから
『肉食いに行こうぜ肉』
そう言うと君は無言で手を繋いで歩き出す
生憎身長が小さい俺は埋もれがちだが君は大きいから結構人避けになる
男同士で繋ぐのも悪くない
『お前も食う?』
こくん
財布を取りだしながら頷く君
焼き鳥を買い二人で食いながら食べる
『すっかりぬるくなったなぁ』
夏の暑さですぐにぬるくなったラムネをごくごく飲む
『ぬるいけど、飲むだろ?』
君は無言で俺の手からラムネを取り少し口に含む
何度か口にしてから俺に帰ってきた
ラムネを全部飲みほし花火が綺麗に見える穴場に行く
もちろん手を繋いで
「ねぇ、俺と一緒にいて楽しい?」
人が少なくなってきたところで君が口を開く
『楽しいに決まってるじゃん』
「、、、そっか」
そこからは2人とも無言で歩いた
心地よい空間だった
誰もいない神社
人が居なくて花火も綺麗に見える秘密の穴場スポットだ
君が座り君の膝の上に俺
体格的にすっぽりはまる
いつの間にか定位置になっていた
花火が始まる
『綺麗だな』
「、、、、そうだね」
少し見て飽きたのか君は俺に顔を埋める
「、、、、、好きだよ」
花火の終わりぎわ呟いた君の声は確実に俺の耳に届いた
嬉しいな、帰りはまたラムネ買って帰ろ
ラムネみたいに甘くてシュワシュワして冷たすぎず熱すぎない俺の恋

8/3/2025, 5:39:27 AM

18 波にさらわれた手紙

この手紙を拾った方へ
罪悪感から僕の罪を書きます
僕は親を殺しました
アル中でいつも僕を殴ってくる父
お金が大好きで僕に保険金をかけて殺そうとしてきた母
僕には兄弟がいました
いつも僕を守ってくれた
僕を庇ったから殴られた痣や切り傷がいつも沢山ありました
ある時本当に僕も兄弟も殺されそうになりました
兄弟が僕を守るので兄弟から殺そうとしてました
兄弟は色んなところを刺されて、血がドバドバ出てました
だから僕は後ろから親を刺しました
救急車を呼んで兄弟は一命を取り留めましたが親は綺麗に心臓を貫いたので死にました
兄弟は入院生活です
警察は正当防衛として僕を捕まえませんでした
兄弟が死にました
父の飲み仲間が病院に乗り込んで殺したらしいです
泣きました嫌になりました
だから、飲み仲間を殺しました
殺すとき、罪悪感はなかったです
だって大事な兄弟を殺したから
何度も何度も刺しました
そしてこの手紙を書いています
手紙の隅が赤黒く染っているのは気にしないでください
この手紙を流して僕も一緒に海に流れたいと思います
拾って読んでくれてありがとう
名前も知らない誰かさん さようなら

8/2/2025, 7:59:26 AM

17 8月、君に会いたい

『なぁ、れい 今日はどうする? 暑い中部活頑張ったし、アイスでも食おうぜ』
そう言ってコンビニに入る
「そうだね、活躍してたしご褒美としてちょっと高いの買ったら?」
『おい、金欠になるって でも買っちゃおうかなぁ』
「いいじゃん ほら、ハーゲン〇ッツがこっちを見てるよ?」
『えぇでもなぁ、、、、期間限定あるじゃん やっぱり買お』
「ふたつあるけどどっちにするの?」
『どっちにしようかなぁ、両方捨てがたいぃ』
「じゃあ、僕がこっち買うから、そっち買って 半分こしよ?」
『え、良いのか? じゃあお言葉に甘えてぇ』
俺はルンルンでレジに向かいアイスをふたつ買う
『じゃああっちで食べようぜ』
「そうだね」
『あぁ、美味しいよ れい』
アイスを食べながら呟く
「また来てるわ、あの子」
「大事な幼馴染を亡くしたんだってねぇ」
「亡くしてもまだその子と喋ってるらしいわよ」
「亡くなった子の幽霊でも見えてるのかねぇ」
通りすがりのご近所ママさんたちの会話が聞こえる
『あぁ、れい なんで、なんで俺を置いていったんだよ』
「君には生きてて欲しかったからね」
僕は涙をこらえて溶けかけのふたつのアイスを食べる
「でも、君がここに居てくれるから、寂しくないよ」
『当たり前だろ 俺のたった一人の親友なんだから』
れいは俺を庇って死んだ
せっかく買った高いアイスが溶けるのも気にせず俺は墓場で涙を流す

Next