踊るように Ver.2
結婚して15年が経っていた。私はちょうど40歳。
お付き合いをしていた頃、20歳のお祝いに、サーモンピンクの薔薇の花を20本プレゼントしてくれたのが、私の旦那様。
「これ抱えて、待ってるのちょっと照れたけど…。」
と笑った彼が可愛らしかった。
派手な喧嘩は2回程したけれど、あなたは結局どこか憎めない。
真っ赤な薔薇じゃなくて、私の一番好きな色の薔薇を選んだり…。今日も鉱物が大好きな私に「結婚15年目は水晶婚っていうらしいよ〜。」
と、水晶の原石をプレゼントしてくれた。
「こっちが今日のメインの鉱物。」コース料理の最後のデザートを食べ終わった私に、リボンがかかった小さい箱を渡した。
ダイヤモンドのRing。
「4月生まれの君に、いつか渡そうと思って…。15年もかかっちゃった。」
照れ屋のあなたらしいなと、嬉しさが込み上げてきてちょっと目頭が熱くなる。
私に内緒で少ないお小遣いの中から捻出してくれたんだ。
「ありがとう。私はあなたと結婚して幸せ。今までも〜これからも。」
「こちらこそ、いつもありがとうね。」
こういうことを、普段は口下手で言わないあなたが言うと、嬉しさ倍増するじゃない。
予約してくれたお店を出て、大通りを歩いて帰った。
結婚する前2人で通ったディスコでかかっていた懐かしい曲がふいに聞こえてきた。
あなたは軽くステップを踏んで、私を笑わす。足がもつれそう。ワインがいい感じにまわって踊るように手を繋いで帰った夜。空には4月の満月ピンクムーンが二人を照らしていた。
貝殻 Ver.2
このお題は2回目なので、はっきり申し上げて書きたくない。
「些細なことでも」でも触れたが、テンションが上がらない。
まだ書き残したお題は喜んで書いていきたい。
けれど…。今日のお題は使用済み。
私は貝になる…。
きらめき
若かりし頃、渋谷のeggmanというライブハウスが好きだった。
あの薄暗がりのステージの中で、スポットライトを浴びて演奏するバンドマンの音楽に乗るのが心地良かった。
その日も数組のバンドが音を掻き鳴らしていた。
その中で、一際輝いていたボーカルがいた。
華奢な身体から発する強くて伸びやかでメロウな歌声。
隣の友達に、「ボーカルの女の子、カッコイイね、うまいね。」
と感動して言った。
スーツ姿のスカウトマンらしき人達がヒソヒソ話している瞬間を目撃した。後に、メジャーデビューするREBECCAの、NOKKOだった。
デビューしたときは、バンドは総入れ替えになってしまったと何かの雑誌で読んだ。
音楽業界って、シビアだ。
でもスターダムにのし上がる人って何かが違う。
ライブハウスでも、NOKKOだけ別次元だったのを思い出す。
そこには、きらめきがあった。
ダイヤモンドの原石をも見つけられる、薄暗い箱…。ライブハウス。
夢中になって通った日々が今では懐かしい。
」
些細なことでも
お題が一周まわってきた。
ささいなことか?私には重大な問題だ。このサイトはもうやめようか…とも考えてしまう。
最初はバグか?と、こころの灯火のお題で思ったが…今日違うと確信した。
運営側にとっては、些細なことでも、使わせて頂いている側の気持ちも考えて頂きたいな、と率直に思う。
何より、書くというモチベーションが、ダダ下がりだ。
どんなお題が来るのだろう…とワクワクしていた自分が、一人取り残された気分だ。
どうか、使い回しをしないでください。
このサイトを楽しんでいた一人として。
些細なことかもしれませんが…。
不完全な僕
名のしれた大学を卒業した。地元では優等生で通っていた僕。
東京にある大手の企業に就職も決まった。
家族も友人も喜んでくれたけれど…。
これで良いのか?と、いつも漠然とした問いかけが自分を襲った。
順風満帆に親の勧めるがままの進路を生きてきた自分が、全く価値のない人間にも思えた。
敢えて茨の道を進みたくなる衝動が抑えられず、新人歓迎会の翌日、今まさに辞表を書いている。
手持ちのお金は、今月分の家賃と親戚やら親から貰った就職祝いのお金。
ここより狭く綺麗ではないが、近くに安いアパートも見つけた。
僕は聖人君子でもないから、めちゃくちゃな夜も経験したい。
ただ、何ものかにはなりたかった。根拠のない自信だけはあるのが笑ってしまう。
これから、家族も友人もなにもかも失うかも知れない。世間は馬鹿な奴だと笑うだろう。
不完全な僕は、それでも生きていけると強く思った。
今夜は、ライブハウスで朝まで音楽に浸りたい。
PUNKが聴きたいな。ヘヴィメタルも…。
翌日は、古本屋で読みたかった古典文学を大人買いしよう。
満喫で漫画の一気読みもしたい。
バイト先もみつけなきゃ。
何故だか顔がニヤけてくる。
親の描くエリート路線に乗っかる人生を捨てた。
完全でない自分を愛していこうと思った。
心の赴くままに。
足掻きながら生きていこう。
何者かになる為に…。