貝殻 Ver.2
このお題は2回目なので、はっきり申し上げて書きたくない。
「些細なことでも」でも触れたが、テンションが上がらない。
まだ書き残したお題は喜んで書いていきたい。
けれど…。今日のお題は使用済み。
私は貝になる…。
きらめき
若かりし頃、渋谷のeggmanというライブハウスが好きだった。
あの薄暗がりのステージの中で、スポットライトを浴びて演奏するバンドマンの音楽に乗るのが心地良かった。
その日も数組のバンドが音を掻き鳴らしていた。
その中で、一際輝いていたボーカルがいた。
華奢な身体から発する強くて伸びやかでメロウな歌声。
隣の友達に、「ボーカルの女の子、カッコイイね、うまいね。」
と感動して言った。
スーツ姿のスカウトマンらしき人達がヒソヒソ話している瞬間を目撃した。後に、メジャーデビューするREBECCAの、NOKKOだった。
デビューしたときは、バンドは総入れ替えになってしまったと何かの雑誌で読んだ。
音楽業界って、シビアだ。
でもスターダムにのし上がる人って何かが違う。
ライブハウスでも、NOKKOだけ別次元だったのを思い出す。
そこには、きらめきがあった。
ダイヤモンドの原石をも見つけられる、薄暗い箱…。ライブハウス。
夢中になって通った日々が今では懐かしい。
」
些細なことでも
お題が一周まわってきた。
ささいなことか?私には重大な問題だ。このサイトはもうやめようか…とも考えてしまう。
最初はバグか?と、こころの灯火のお題で思ったが…今日違うと確信した。
運営側にとっては、些細なことでも、使わせて頂いている側の気持ちも考えて頂きたいな、と率直に思う。
何より、書くというモチベーションが、ダダ下がりだ。
どんなお題が来るのだろう…とワクワクしていた自分が、一人取り残された気分だ。
どうか、使い回しをしないでください。
このサイトを楽しんでいた一人として。
些細なことかもしれませんが…。
不完全な僕
名のしれた大学を卒業した。地元では優等生で通っていた僕。
東京にある大手の企業に就職も決まった。
家族も友人も喜んでくれたけれど…。
これで良いのか?と、いつも漠然とした問いかけが自分を襲った。
順風満帆に親の勧めるがままの進路を生きてきた自分が、全く価値のない人間にも思えた。
敢えて茨の道を進みたくなる衝動が抑えられず、新人歓迎会の翌日、今まさに辞表を書いている。
手持ちのお金は、今月分の家賃と親戚やら親から貰った就職祝いのお金。
ここより狭く綺麗ではないが、近くに安いアパートも見つけた。
僕は聖人君子でもないから、めちゃくちゃな夜も経験したい。
ただ、何ものかにはなりたかった。根拠のない自信だけはあるのが笑ってしまう。
これから、家族も友人もなにもかも失うかも知れない。世間は馬鹿な奴だと笑うだろう。
不完全な僕は、それでも生きていけると強く思った。
今夜は、ライブハウスで朝まで音楽に浸りたい。
PUNKが聴きたいな。ヘヴィメタルも…。
翌日は、古本屋で読みたかった古典文学を大人買いしよう。
満喫で漫画の一気読みもしたい。
バイト先もみつけなきゃ。
何故だか顔がニヤけてくる。
親の描くエリート路線に乗っかる人生を捨てた。
完全でない自分を愛していこうと思った。
心の赴くままに。
足掻きながら生きていこう。
何者かになる為に…。
言葉はいらない、ただ・・・
渾身の一枚を描き上げた。
指先も腕も、身体中が痛かった。もう1ヶ月まともに眠っていない。
君の寝姿が余りにも美しくて、僕は感動しながら今日までこの絵に集中した。
誰に褒めて貰いたい訳でもない。
ただ、ただ描きたくて仕方なかった。
こんな気持ちになったのは、美大の受験の最中に初めて裸婦を描いたとき以来だ。
あのときは、デッサンだった。
モデルの女性の息を呑むほどの、均衡のとれたスタイルと独特なアンニュイさに惹かれた。
私は、女性の身体の線がとても好きなことに今更ながら気付かされた。
そして、描き上げたこの絵を、君と一緒に観たい。
言葉はいらない、ただ・・・君と一緒に観たいだけだ。
油絵の具が染み込んだ手でスマホを握った。
もう存在しない君のアドレスを開いていた。
涙が頬を伝った。