零℃

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10/22/2023, 8:00:36 AM

俺は叫んだ。
額に汗して。
涙を流して。

煙に巻かれながら。
熱にこらえながら。

貴女へ届く様に。
声が枯れるまで。


そう。
必死に、叫んだつもりだった。

けれども。
その喉を震わせ、鼓膜を伝い届く筈の俺の声は、風の様に、惟々、空を切るばかりで。

目の前に横たわる貴女は、目を覚さない。

どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。

今起きないと、

貴女は、貴女は。


---------おふくろ…おふくろ…火事だ…火事だ…!!


こんなに絶叫しているのに。
こんなに懇願しているのに。


こんなに、悔いているのに。



どうして俺は、貴女より先に逝ってしまったのだろうか。


9/28/2023, 5:35:45 AM

降って来た。
慌てて俺は駆け出した。
走りながら、雨宿り出来る場所を脳裏で探す。
ひと気もまばらなこんな片田舎じゃぁ、カフェなんて気の利いた場所なんて何処にもない。

「クソが」

今日はついていないことばかりの俺は、思わず独り言る。

テストの点数は芳しくない。
弁当は量が足りない。
うちは片親だから、料理当番である今日はスーパーに寄らないとならない。

学校帰りにバスを逃した挙句、大粒で降る雨に打たれるとは。
普段なら「そんなこと」と一蹴するそれらが、今は鬱陶しくて仕方がない。

早く帰りたい。

そう思いながら、ずぶ濡れのままスーパーへ駆け込むことを決める。

公園を曲がったところで、不図、大きな傘をさした人とすれ違った。
すれ違いざま、名を呼び止められる。
ぎょっとして振り向くと、それは父だった。

「え、親父。マジか。どうしたん?仕事は?」

「まだ途中なんだけど。お前が帰る頃だし、雨に気付いて、迎えに。」

寝不足顔で、親父はくしゃっと笑った。

嗚呼、そんなことする親父だよ、あんたは。
滅茶苦茶疲れているのに。
滅茶苦茶苦労掛けているのに。

ちょっとしたことでも、いつだって駆け付けてくれるんだ。

テストの点数悪くてごめん。
食い盛りでごめん。
おふくろ止められなくてごめん。

「でも、通り雨だったなぁ。」

そんな思いを他所に、親父はまた笑う。

「帰ろうか。」

「あ、スーパー寄って。」

「おう。今日の晩メシ何だ?」

他愛もない会話。
畳む傘。
日の射し始める空。

雨の通った後、俺の心は晴れていた。

9/24/2023, 8:04:04 AM

月夜のジャングルジム
ブランコが揺れている
仰いだ空は
星で一杯だった

あれが北斗七星で
あっちがカシオペア座

その間が
北極星だよ

得意げに、君が微笑う。
星のことは、俺に任せろ。

嗚呼……
君よ、君。
僕は、この気持ちを。
この気持ちを、如何したら良い。

ジャングルジムのてっぺんで
ただただ
君を見つめる

8/29/2023, 12:46:37 PM

言葉はいらない、ただ…
ただ………どうか………

8/24/2023, 6:08:09 AM

海へ

海へ、行った。
友人と二人で連れ立って、嵐の後の、ぽっかりと月の浮かんだ、静かな海へ行った。

埠頭。
潮の香り。
灯台の灯り。

何か云いたかった。
何か云いたげだった。

けれどもずっと、黙っていた。
惟々二人で、海を眺めていた。

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