────あの子は可哀想な子なんだ。
みんながそう呟く
────だから、優しくしてあげなさい
私は、『可哀想』なんだろうか?
生まれてこの方、この身体でずっと生きてきた。
辛いこともあるけど、それが当たり前で・・・
自分を可哀想な奴だと思ったことはないのに・・・
「どうしてあの子が可哀想なの?」
誰かがそう言った。
────あの子は身体が弱いんだ。
そうだ、すぐに生きが切れて、苦しくて動けなくなる。
それでも同情なんてされたくなくて必死に虚勢を張ってきた。
「あの子は可哀想なんかじゃないよ?」
いつかのあの子がそう言った。
「だって、いつも笑顔だもん!わたしもね!あの子と一緒だと楽しいよ?みんなとなにも変わらないよ!」
いつかのあの子が無邪気に笑った。
あの子の前でだけは、私は『可哀想な子』なんかじゃなかった。
「もう冬だね〜」
「そうですね」
落ち葉の上を二人、音を立てて歩いて行く。
「あ!落ち葉が山になってる!」
「すごい量、誰かが集めてくれたんですね」
「ねぇねぇ、ちょっと突っ込んでみようよ」
「え、嫌ですけど」
「迷いねぇな!?犬は喜んで突っ込んでいくってのに!」
「だって犬じゃないですし、行きたいなら一人でどうぞ」
「ぐぬぬ、でも突っ込みたい衝動抑えられない!」
うりゃ!と落ち葉の山に突っ込んだ。
すっぽりと中へ納まって彼女の姿が見えなくなる
(・・・・・・出てこない)
「あの、大丈夫ですか?」
「隙あり!!」
「!!」
腕引っ張られ引摺り込まれる。
「ぶはっ!・・・何するんですか!」
「ははは!隙をみせたそっちが悪い!」
「もう・・・・・・あ」
「?」
「頭、虫」
「〜〜〜〜〜〜っ!?!」
大慌てで頭をはらう、服の中に葉が入ったのか身体をクネクネさせて「とってぇ〜」と懇願する姿が面白くてつい笑ってしまった。
そうやっていつもアナタはわたしに笑顔をくれる。
きっと今日も、私を元気づけるためにあんなことをしたんだろうな・・・
そんなアナタが大好きで、いつもわたしは許してしまう。
残り少ない時間を懸命に生きて、生きて・・・
もう心残りはないと覚悟を決めた。
っていうのに、私は今も生きている。
なんで?どうして?わからない・・・
まるで全力疾走で走って、もうすぐゴール目前というところでゴールテープが突然遥か彼方へ飛んでいってしまったような、そんな感じ・・・
息を切らし呆然と立ち尽くす私の手を、誰かが掴んだ。
「?」
「いきましょう」
そう言って私を引っ張っていく。
一歩、また一歩
「どこへ行くの?」
「どこへでも」
「どこへでも?」
「あなたのいきたいところへ」
「行きたい、ところ・・・」
「もう、諦めなくていいんですよ」
「!!」
あぁ、そうか・・・私は諦めていたのか・・・
私は、もう諦めなくていいのか・・・
「うん、いこう」
諦め続けた今日までの日々へさよならして、
新しい明日へ歩き出す。
誕生日に彼女がスマートフォンのケースをプレゼントしてくれた。
以前、君がプレゼントしてくれた犬のキーホルダーと同じデザインがプリントされたものだった。
嬉しくてみんなに見せびらかして、あんまりにもしつこく見せたもんだからウザがられてしまったけど、
でも嬉しかったんだもん、しょうがないよね。
年月が経って、スマートフォンを新しく買い替えることになった。
ボロボロになってしまったスマホケースは新しいスマホには形が合わなくて使えない。
私は前のスマホを下取しないで手元に残しておいた。
今はケースと一緒にお守りのように持ち歩いている。
もうボロボロで犬のイラストも掠れている。
それでも手放すことが出来ない。
私のお気に入りで、宝物・・・
君から貰った
最後のプレゼントだから
誰よりも
────貴女を愛しています
────君を愛しています