新年
新年だ。
しかし、私にとってはただ日が変わっただけなので
そんなに特別なことではない。
今日も湯船のなかで日をまたいだ。
なんにもしていないはずの体が疲れ果てたふりを続けるから、
私は今日もいもむしだった。
布団にくるまって蛹、だけれど
羽化はいつも失敗して蝶になれない。
新年。
新しい年が来た。
新しい時間がまた私を追い立てに来た。
去年とちっとも変わっていない、
むしろ退化していく私を追い立てに。
いらない使えないアプリと画像ばっかり入った私のスマホ。
いらない使えないことばっかり覚えていく私。
動作ばっかり重くなって苦しくて苦しくて仕方ない。
溺れてなんかいないのに。
新年が来た。
それでも少しは変わっている。
今年は何が退化するんだろう。
星に包まれて
夜空みたいに真っ暗な部屋で、視認できない明るさを放つ私がいる。 恒星のように熱を持ち、巡る空のように思考を回す。
うるるる、くるる。
喉を鳴らして、尻尾を揺らす君が来たので空は夕焼けのまま止まっ た。
なうなうおしゃべりな君は、真っ黒なのに同じ真っ暗な夜空を切り開 いてしんと月のような目で私を見る。
ただそこに動くものがいるから、眺めるという感じ。
私たちはお互いにそういう距離感。
星座みたいに繋がるけれど、別に近くに居続ける訳じゃない。
それでもおんなじ毛布にくるまって、
見えない明るさと染み入る温かさで眠るのだ。
揺れるキャンドル
ふわふわ漂う充足感。
はためく影。
となりに、あなたのぬくもり。
一人で生きていけるはずの心。
しかし、あなたがいた方が断然健やかだ。
揺れたのは火じゃない。
キャンドルそのものだ。
あなたが私の軸を変えたのだ。
ふわふわ漂う充足感。
はためく、2人分の影。
となりに、あなたの鼓動。
二人のほうが幸せな心。
あなたが居る、暖色の空間。
ゆらめく炎。
溶けゆくキャンドル。
兎に角、兎に角、私は満ち足りている。
満ち足りているのだ。
明日への光
重苦しい朝焼け。
暗い、暗い心象。
時の花の貴女。
脳裏の笑顔の温かさは今や僕を焼いている。
煌々と照る太陽。
青い、蒼い花筵。
花時の貴女。
遠い日の記憶がジリジリと焼き付き警鐘を鳴らしている。
また手遅れになる、きっともう手遅れだ、を
繰り返して繰り返してしなだれながら生きている。
僕は貴女の催花雨にはなれない。
貴女は一人で咲けるから。咲いてしまったから。
常初花のような貴女。
今はどこへいらっしゃいますか。
生きていますか。
死んでいますか。
それとも、泣き笑いで半々ですか。
いずれにせよ、貴女が僕にくださった綻ぶ笑顔は
明日への光でした。
確かに、確かに明日への光でした。
贈り物の中身
乱雑に巻かれた正方形の箱を抱えたお前が窓から見える。
乱雑というよりはただただ下手くそなだけなんだろうな。
玄関の前でずっと何かを待ち構えている。
その何かが誰なんてすぐに分かる、今までもそうだったんだから。
最低限人前に出れる支度をして、玄関を開けてやる。
誕生日おめでとぉーーーっ!!!!!!!!!!
大きな声でお前が思い切り飛び込んでくる。
待たせてる間についた雪が冷たくって、
押しのけながら家の中に連れ込んだ。
いつだったか、クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントは
一纏めで2つもらったことなんてないなんて言った俺に
そんなのもったんないよぅ、と叫んでから、
毎年お前はプレゼントをふたつもってくる。
決まって2つ、俺の欲しいものとお前が俺に渡したいやつ。
今年は何を渡しに来たんだよ、と聞いてみりゃあ
開けてからのお楽しみだよぅ、とヘラヘラ笑うばっかり。
ただ、今年はなんだか緊張も入り混じっているようだった。
いっつも好きなもん送りつけて、
色んな趣味を持たせてきやがったくせに
今年は何をモジモジしてやがると貰ったプレゼントを開ける。
あっ、ねぇちょっと待ってよぅ
なんて情けない声が聞こえてくるけど無視して開けた。
中にあったのは随分不格好なマフラーと手袋。
どっちも俺の好きな青で、拙い刺繍のワッペンとかが付いている。
寒そうにしてたからね、作ってみたんだけどね、
そんなになっちゃって。でもね、もらってほしくて。
へにゃへにゃの恥ずかしそうな笑顔としりすぼみな声で、
うつむきながらお前が言う。
可愛いやつめ、お前がくれたんなら俺はなんだって嬉しいよ
と突っついてやればよかったぁ、なんて
ようやくいつもの調子で笑った。
出掛けようぜ、これつけていきたい
なんて無茶を言えばお前はまたヘラヘラ笑って
この寒ぅ中に出ていくのぉ?
ともそもそ家から出る支度をする。
全くノリのいいやつだ。
その寒ぅ中でずっと待ってたろうとまた突っついてやれば
あははと笑って玄関に向かって歩いてく。
貰った宝物をつけて、まぁ適当に図書館かなんかにでも行こうかと
二人でヘラヘラ笑った。