秋の訪れ
寒々しくなってきた空。
まだ息は白くはならないけれど、
びゅうびゅう風が暑さを連れ去る。
けれどもなんでもないような顔をしたあんたは
へっちゃらみたいでからから笑っている。
寒くはないの、と何度も問うてはみるけど
平気の一言だけが返ってくる。
まだ君にだけは秋が来ないんだねぇ、と笑えば
君は変なの、と言ってまたからころ笑うのだった。
まだ夏の君ともう秋の僕がいれるのはあと数日だけ。
夏と秋を一緒くたにして、次の休みは僕ら二人で何をしようか。
モノクロ
登校、学習、帰宅、睡眠。
登校、学習、帰宅、睡眠。
登校、学習、帰宅、睡眠。
繰り返し繰り返しですり減る日々は当たり前に色褪せる。
節目に。
出社、仕事、帰宅、睡眠。
出社、仕事、帰宅、睡眠。
出社、仕事、帰宅、睡眠。
色褪せた日々は境がぼやける。
境の薄れた者たちは否応なしに溶け合っていく。
モノクローム。セピアチック。
ワンパターンの配色にのまれていく。
色が濃くても薄くても、有色彩でも。
混ざればただの溝色になる。
擦りきれたモノクロームも、
うすぼけたセピアチックも、
けがれのない有色彩も。
結局は薄汚い溝で、流れて消えて分からなくなってしまうのだった。
夏草
青々としたくさっぱらの海に呆然と立っている。
空には雲ひとつない。
地平線までが透き通って見渡せるほどだった。
ジリジリとした暑さが肌を焼く。
体中から汗が噴き出る。
しかし遮るものはない。
あるいは、草を編んで被ればマシだろうか。
私は一体どこから来たのだったか。
どんな目的で、どうやって?
夏草の群れは依然として青々しい。
強度は十分にあるだろうか。
屈み込んで、引きちぎろうと手を伸ばす。
瞬間、強い風が吹いた。
日陰が必要ないほどの涼しさをもたらしている。
手元の夏草を見つめる。
青々とした夏草は陽光と風を受け生き生きとさざ波合っている。
そのまま地べたに座り込む。
燦々と輝く太陽が煌々とこちらを見つめている。
どうやってここまで来たかなんて覚えていないが、
足があるのだから歩いていけばいいだろう。
すっくと立ち上がり、目の前に歩いていく。
どこに進めばいいかなんてわからないが、進めばきっと何かある。
ここにある
風が流れるように、
海がさざ波を起こすように。
この世にとどまり続ける永遠など
ひとかけらもありはしない。
それでも私は求めてやまない。
今を生きとし生けるもの共その全てが、
その胸の内に、
体内にのみ下したその想いや思いは、
それだけは。
ただただ個々にあり、
ここにあり、
決して潰えるものではないと。
見知らぬ街
見知らぬ景色。
ここは私の知らない場所。
知らない場所は未知で満ち満ちているわけで、
ここは私にとって異世界だった。
ここに来るまで、留まるまで何があったわけでもなく、
ただここから出る気力がないのであろう。
足りない頭で孤独を啄み続けている。
孤独はいつか孤毒となる。
体を蝕むそれらを無視するわけには行かないというのに、
体も頭もいうことを聞きはしない。
これでは屍に変わりないだろう、と嘆き続けている。
生き返りたいのに、死ぬのが怖いのに、
それ以上に知らないを知ることが恐ろしい。
知ったことで、知らない自分が殺されるのが怖い。
毎秒毎秒、知識が、知見が覆されていく世界。
変わってしまった帰り道。
切り倒された、秘密基地のあった森。
なくなってしまった大好きな遊具。
みんなみんな変わってしまって、
ここはもう見知らぬ街になってしまった。
見知らぬ街を知ることが、見ることができなくて。
まだみんなと遊んでいたくて。
一緒に給食を食べてたくて。
学校に行っていたくて。
休日には買い物とか行きたくて。
けれどここはもう知らない場所だから、
見知らぬ街だから、
啄んだ孤独に啄み返されて消えてなくなるしかないんだ。