大狗 福徠

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夏草
青々としたくさっぱらの海に呆然と立っている。
空には雲ひとつない。
地平線までが透き通って見渡せるほどだった。
ジリジリとした暑さが肌を焼く。
体中から汗が噴き出る。
しかし遮るものはない。
あるいは、草を編んで被ればマシだろうか。
私は一体どこから来たのだったか。
どんな目的で、どうやって?
夏草の群れは依然として青々しい。
強度は十分にあるだろうか。
屈み込んで、引きちぎろうと手を伸ばす。
瞬間、強い風が吹いた。
日陰が必要ないほどの涼しさをもたらしている。
手元の夏草を見つめる。
青々とした夏草は陽光と風を受け生き生きとさざ波合っている。
そのまま地べたに座り込む。
燦々と輝く太陽が煌々とこちらを見つめている。
どうやってここまで来たかなんて覚えていないが、
足があるのだから歩いていけばいいだろう。
すっくと立ち上がり、目の前に歩いていく。
どこに進めばいいかなんてわからないが、進めばきっと何かある。

8/29/2025, 8:54:06 AM