【この道の先】
夢を見ている。
先の見えない、長い、長い道をひたすら歩く。
この道を進むと何があるのだろう。
そう思いながらも歩き続ける。
しばらくすると猫がいた。
美しい白猫。
とても可愛い。
猫が教えてくれた。
「これは其方の人生。
壮絶なひとつの生命の物語。」
もう一度言う。
猫が教えてくれた。
なんて親切な猫なのか。
猫は更に、
「歩いていくと分岐点がある。
己の感覚で、導かれるまま進め。そこが其方の道標となる。」
私は道なりに歩く。
歩いて、
歩いて、
着いた。
小さい、田舎のバス停のようなところを境に道が別れている。
これが自分の人生を左右するなんて到底思えない。
それに、なんの出来事の分岐なのかすらもわからない。
共に生く。故に汝憂し*。◀︎
▶異に生く。さすれば汝樂*。
不安を覚えつつ直感で右に進む。
そして歩く。
とにかく歩き、
闇に飲まれた。
鳥のさえずりで目を覚ました。
やっぱり夢か。
夢。
夢、
夢?
なんだっけ。
あれ?私何か忘れてる気がする。
まぁいっか。
そろそろ支度しなきゃ。
私は今彼氏と揉め事をしていた。
元々同棲していたのだが、それ故か以前は見えていないところやDVが出てきて耐えられなくなってしまっていた。
今は一旦別居中。
別れるか別れないかの寸前まで話は進んでいる。
今日はその話し合い。
正直このまま付き合える気もしない。
……でも、、別れる勇気もない。
今更、、。
「うっ、」
"▶異に生く。さすれば汝樂。"
「?」
ふと、脳裏にそんな言葉が浮かんだ。
異に生く、、異なる、生きる。別々に、生きる?
さすれば汝樂、、そうすれば楽になれる、?
「うぅっっ、え?また、?」
『己の感覚で、導かれるまま進め。そこが其方の道標となる。』
そうか、私はあの夢で選択したのか。
自分で、自分の意思で。
そう思うと弱気な考えは無くなっていた。
きっと、覚えていないだけでこれまでもあの道を進んだことがあったのだろう。
そしてこれからも。
もちろん、貴方にも。
「これは其方の人生。
壮絶なひとつの生命の物語。」
(補足)
憂し*=つらい、苦労
窓越しに見えるのは
ふと窓越しに空を見上げる。
快晴。
次に地上を見る。
猫がいる。
かわいい。
遠くを眺めると、
広がる海。
地平線が綺麗な弧を描いている。
砂浜にいるのは私の彼と……知らない女。
誰。
知らない。
自分の手元を見る。
握られた包丁。
赤い。
もう一度砂浜を見る。
やっぱり彼らがいる。
赤く染って。
君と最後に会った日のこと。僕はもう覚えてないや
繊細な花。
"世界に一つだけの花"の君だよ。
※数日前の【1年前】というお題で書かせていただいた作品の続きです。合わせて読むとよりお楽しみいただけると思います!
1年後の僕。
1年後の僕はどんな人になってるのだろうか。
クソ親の元を離れ、
1年前、僕が死のうとしていたあの日に出会った君と日常を送っている。
君と出会えたことに関しては親に感謝かな。
今日、僕は君とあの日僕らが出会った廃校舎に来ている。
あの人変わらない景色、風、フェンスの錆。
たった1年。されど1年。
僕らは変わった。
「またここに来る日がくるなんてね。」
君は言った
「そうだね。1年前の僕は思いもしなかった。」
僕は応えた
「ふふっ、私も」
君はそう答えて、あの日よりも美しく、揺るぎない笑顔を見せた。
「一緒に生きよう。ずっと、ずっと。これからも。」
「もちろん」
――君と一緒に。
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1年後の私。
1年後の私はどんな人になっているのか。
"君"という居場所を見つけ、
1年前、私が死のうとしていたあの日に出会った君との日常を送っている。
独りだった私に居場所をくれた君には感謝しかない。
今日、私は君とあの日私たちが出会った廃校舎に来ている。
あの人変わらない景色、風、フェンスの錆。
たった1年。されど1年。
私たちは変わった。
「またここに来る日がくるなんてね。」
私は言った
「そうだね。1年前の僕は思いもしなかった。」
君は応えた
「ふふっ、私も」
あの日よりも確かな笑みを浮かべ、私は応えた。
「一緒に生きよう。ずっと、ずっと。これからも。」
「もちろん」
――君と一緒に。