haru

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10/31/2023, 3:19:55 PM

死後の世界がもしあるなら
こういう所なのかと思った。

山水画のような二色の世界
白く大きな岩肌に沿うように建てられた家
の中は暖かい色のランプがいくつも吊られていて
貴方は 貴方の好きな物達と
ひっそりと暮らしていた
いつ会った時よりも穏やかで
楽しそうにゆっくり話してくれた
静かで
優しく
ずっと続いていく世界

私はなんだか安心して
同時に
気付いた ここは
貴方が作った
貴方だけの世界だと

お客の私は
頃合いを見て帰る
貴方は楽器を弾きながら
笑顔で軽く手をあげる
いつ来てもいいけど
いつまでもいられないんだな

上手に作ったね
私の世界が出来た頃に
また来るね

(死んだ恋人の夢を見た)



(理想郷)

10/30/2023, 2:34:20 PM

この道は
知らない道
似ても似つかぬ
あの風景とは

なのにどうして
あの匂いがするの
同じ色をしているの
私の足を掴んで
ここに張り付かせたの
どうして

目眩 が
空は 白く
今 ここ どこ

してやったりの気配を感じて
早々に負けを認める
随分遠くに来たのに
この感覚を連れてくるなんて

スイッチは日常を無視して
何かによって
押される

ついでに
時間も止まる


何 あんた
いつの間に来てたの



(懐かしく思うこと)

10/29/2023, 2:29:03 PM

昔々に枝分かれして
奇しくもまた合流した個と個の
こちら側からの視点と
あちら側からの視点の
折り合いの 共通の はたまた
大半を占める不透明部分を
そんなこともあった、で気安く飛び越えられる軽快さが
君のチャームポイント


(もう一つの物語)

10/28/2023, 3:01:10 PM

緞帳みたいなカーテンが下がる私の部屋は、昼でも暗い。時計はあれど、これはどっちの五時なのか?

枕元に酒瓶と灰皿を置いて、絡まっては眠ってまた絡まって。時々腹が空いて外に出る以外を真っ裸でずっと。カーテンは閉じたまま、灯りは傘を外したテーブルライト(すなわち裸電球)。何日経ったか、外は。

薄く汗の残る背中を眺めながら、あんたの体の形が好きよ、と言った。俺もお前の体の形が好きだよ、と言われた。
骨の輪郭がよく分かる、綺麗な形。あんたに私がどう見えたかは分からないけど。

寝入るまで怪談をし合ったり、半日ゲームでわあわあはしゃいだり、空になっていく酒瓶と、満たされていく灰皿傍らに、楽しいね。


あんたの体も時間も好きだけど、見送った後、数日ぶりの一人も好きよ。
ライトを消して、暗がりの、本物の暗がりの中、目を開いて、ああ一人だっていうこの空間がさ。
なんだか本物なんだなって。



(暗がりの中で)

10/27/2023, 3:43:18 PM

深夜、数時間の押し問答の末についに向こうがキレだして、観念して家を出る。
向かいの本屋のシャッターの前。ここでずっとメールしてたんか。気合いやな。あんたこんな顔してたんやね。
男の家の男の部屋に入って、まあ適当に抱き合って一服して、何を話したんだっけ。Syrup16gのクロールが流れていた。
いつの間にか朝になって少し眠って。
起きたら隣に男はいなかった。わりとしばらくいなかった。
携帯をいじっていると、階段を上がる音。戻ってきた男の手には、2Lペットボトルとマグカップが二つ。
飲みな、と何かを入れて渡してくれた。
意外なことにミルクティー。それもなんか市販ぽくないやつ。
どしたんこれ。
作ったやつ。
は?自分で?
そうやけど。
手作りミルクティーをペットボトルにぶち込む人を初めて見た。しかも無駄に美味いのだ。
飲みながら、そろそろ帰るわ、と。送るか?とは言ってくれたが、遠慮してそのまま部屋を出た。男はずっとミュージックビデオを観ていた。

まだ斜めにある太陽に温めてもらいながら、さっきまでのことをなぞる。
シャッターの前の不機嫌面と、クロールと、ミルクティー。一重と、線の細い体。
初めての、これっきりの、さっきまで。
明日男は行ってしまう。また遠い所へ帰るのだと言う。そうして昨日までの二人に戻る。

私が、あんたが、お洒落なティーカップでお洒落な紅茶を飲む人間で無くて良かったよ。色とか香りを楽しむ人間で無くて良かった。素敵な名前を知らない同士で、本当に良かった。

もしそれだったら綺麗過ぎて。
思い出にするには、パンチが足りんよ。



(紅茶の香り)


※実話。思い出しながらの、脚色。

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