お題『星のかけら』
昼前、伊多孝雄(いだたかお)とその兄、藤雄(ふじお)はNZ L(ニュージーランド)のオークランドの街を一望できる展望スポット、マウント・イーデンと呼ばれる観光地に訪れた。目の前には芝生のように草が一面広がっている。まるでパスタ皿のように中央に窪んだ箇所があり、ここがかつての活火山だったということが物語っているかのように、中央部分以外にも浅く窪んだ箇所がいくつかある。しかし現在は火山活動は起こっておらず休火山となっている。孝雄は感動していた。
孝雄「凄いね、兄さん。こんなに深い火山できたクレーターを間近で見れるなんて幸せだ。久しぶりに研究したくなってしまったよ」
孝雄は今では萌香達の通う高校の校長先生だが,それ以前は別の地域の高校で生徒達の前で地学の授業をしていた。
藤雄「相変わらず,お前は火山とかそういうの好きだな(笑)もう一つお前に見せたい場所があるんだ」
そう言って孝雄達は火山で出来たクレーターとオークランドの街を眺めながら藤雄が出かける前に作った昼食用のお弁当を食べる。山を降りてしばらく車を走らせ今度は船着場に車を停めた。次の観光する場所はフェリーに乗ってティリティリマタンギ島という世界的に珍しい鳥類の楽園として人気ある島らしい。
外周を歩いて約1時間後足元に握り拳ほどの大きさの石を見つけた。孝雄は手にとってまじまじと観察していると……。
孝雄「兄さん、見てよ」
孝雄は子供の頃に戻ったように目を輝かせて兄に石を見せた。
藤雄「どうした」
孝雄「大発見だよ」
藤雄「だからどうした?」
孝雄「星のかけらを発見したんだよ!!」
「本当か?」と藤雄も石に飛びついた。
藤雄「俺の知り合いで石に詳しい奴がいるんだ。そいつに調べてもらえるか聞いてみるよ」
孝雄「え?日本に持って帰って自分で調べたいんだけど……」
藤雄「それは難しいな……石の種類や状況によって持って帰れるかは異なるんだよ」
孝雄「そう……なんだ」
藤雄「落ち込むなよ。俺が責任持って知り合いに頼んでみるからさ!」
End
お題『Ring Ring…』
枕元に置いていた携帯から電話の着信音がリンリンと鳴っている。結構長いな……。急ぎかなそう思いながら船星(ふなぼし)は携帯を手に取り画面に表示された名前を確認する。
船星「大神?」
着信相手は同じクラスの大神だった。電話に出ると……。
大神『お〜。船星。やっと出よった。お前メール見てへんやろ?』
メールなんて届いていたのか。船星は病院から帰って来てレトルトのお粥を2つ口ほど食べ、医者から処方された風邪薬を飲んで寝ていたので全く気づいていなかったのだ。
船星「……うん、ごめん。寝てた」
大神『お寝坊さんやな。もう夕方やで(笑)』
船星「……そうなんだ』
相変わらず元気な大神に、船星はついていけないので今すぐにでも電話を切りたくなった。しばらく無言でいると受話器の向こうから『大丈夫か?』と心配した大神の声が聞こえてくる。あ、まだ通話中なんだ。そう思い船星は返事をする。
船星「……うん、大丈夫だよ」
大神『ホンマか?なんか、めっさしんどそうやけど。お前まだ体調悪いんか?』
船星「!?どうしてわかるの?」
大神『どないもこないも、イルミネーション行く日、“体調悪い“からドタキャンしたやん自分。それにな最近風邪が流行っとるってバイト仲間が言うてたからなぁ。……ぁッ!?、エエこと思いつ〜いた!船星、今から1時間後にまた電話するさかい。すぐに出てなぁ』
急に通話が切れた。その後きっちり1時間後に大神から電話の着信が鳴る。
大神『船星。俺、今お前の家の前におるねん。部屋入れてくれへん?』
船星は慌てて部屋のカーテンを開け窓から外を眺めると携帯を片耳にあて、スーパーの袋を2、3袋手に持っている長身の青年(大神)がこちらに気付き身振り手振りで『開けろ』と言っていた。
End
お題『追い風』
後ろから吹いてくる風が僕の歩くスピードを少しだけ早くする。まるで誰かが背中を押してくれるかのように……。
そんな追い風に吹かれて道に落ちていた白いコンビニの袋が空へ舞い上がった。
船星(ふなぼし)は病院の帰りそれを目で追って家路に着くのだった。
End
お題『君と一緒に』
船星(ふなぼし)はベットの中にいた。仰向けになったまま腕を天井に向け携帯を持つ。液晶画面に表示されたカレンダーを眺め大きくため息をついた。
船星「はぁ。こんな日に限ってどうしてまだ風邪が治らないんだ」
こんな日……。今日は心待ちにしていたイルミネーション当日の朝だった。
なのに船星は水泳部部長に借りたTシャツを返しに行った帰り、近くのスーパーで昼食を買った帰り道にゲリラ豪雨会ってしまいずぶ濡れになってしまった。
それが原因でまた体調を崩してしまった。熱が上がったり、下がったりを繰り返している。
体調さえ崩していなかったら今夜、君(萌香)や大神達と一緒にイルミネーション見に行けたのになぁと心の中で思いながら船星は大神にドタキャンのメールを送信するのだった。
End
お題『冬晴れ』
伊多孝雄(いだたかお)の兄、藤雄(ふじお)が住むNZL(ニュージランド)を訪れて2日目の朝を迎えた。
孝雄は洗面所で顔を洗いリビングに行くと。藤雄がキッチンで朝食を作り、リビングテーブルに並べていた。
孝雄「おはよう」
藤雄「おう、おはよう。よく眠れたか?」
孝雄「ま、まぁまぁかな」
孝雄は数年前から不眠症に悩まされている。医者によれば精神的なストレスが原因だろうと診断され、どうしても寝付けない時は睡眠薬を服用するように処方された。ストレスの原因は解っている。しかし対処法が難しい。だから少しでもストレスを軽減させる為に日本を離れ藤雄のいるNZLへ訪れたと言っても過言ではない。
孝雄「兄さんが朝食を用意しているのかい?」
藤雄「朝食だけじゃないぞ。平日は俺が家事を担当している。フィラは忙しいからな、孝雄が起きる前に仕事へ行ったぞ」
藤雄の妻、ミクロフィラ(愛称はフィラ)は観光案内所で働くキャリアウーマンである。
藤雄が子供たちを起こしに行った。子供達は日本と違い学校に通っているようだ。
孝雄は1人で黙々と朝食を食べた。食べ終わった食器は流し台へ置くように言われている。その後孝雄は部屋に戻り、出かける準備をしながら、観光で訪れる場所の天気を携帯で調べていた。すると嬉しいことに今日の昼間は冬晴れであると表示されている。だが、NZLの天気は変わりやすい。雨具をボディバックの底に入れるのだった。
End