お題『どこまでも続く青い空』
今日は、校外授業という名の遠足。
同じ学年同士、クラスの枠を超えて生徒だけじゃなく教師とも仲良くしようというのが目的らしい。
学校からバスで約1時間移動した先は都会から少し離れた自然豊かな場所だ。
最近流行りのキャンプもできる他、場所(エリア)によって異なる様々なアウトドアが充実している。
萌香達のクラスはBBQと酪農体験が出来る場所にいた。
萌香は空を仰いで歩いていた。
萌香「どこまでも続く青い空と……」
歩みを止めその先へ指を指す。
萌香「どこまでも広がる青い海!海はいいね」
真珠星(すぴか)が透かさずツッコミを入れる。
真珠星「海じゃねぞ〜。湖畔だ、湖畔。間違えるなぁ〜」
萌香「分かってるわよ!言ってみただけですぅ〜」
少し膨らました頬を真珠星に見せる萌香だった。
そのやりとりを遠くから見ている男子生徒が居たのをまだ萌香は知らない。
End
お題『衣替え』
高校生になってもうすぐ1ヶ月経ったある日。
教室のクーラーは稼働しておらず、窓を全開していたにもかかわず風が入ってこない教室で、朝のホームルームで担任が来るのを待っていた。
時間になって担任が半袖半ズボンという涼しくラフな服装で入って来た。それを見た生徒は皆険しい顔をしている。
担任「よ〜し。全員いるなぁO〜K!どうした?お前ら変な顔して?」
担任はわかっていないのだろうか。クーラーの効いていない蒸し暑い教室はさながらサウナ状態だ。それに加え冬服の制服のままである。
沈黙が続く中、クラスの“委員長“と呼ばれる少女が手を挙げた。
委員長「先生!私達の衣替えはいつですか?暑くてたまりません!!」
委員長の問いに生徒全員の目が輝く。早く、夏服に衣替えがしたいと……。担任は委員長の予想を超えた答えが返ってきた。
担任「あぁ。それな……今日の放課後職員会議で決めることになっている。決まり次第後日連絡するからそれまで冬服でよろしく〜」
私達の衣替えはまだ先になるみたい。
End
お題『声が枯れるまで』
声が枯れるまで力いっぱい屋上から叫んでみたら
グランドにいた全員がこちらを見たの。
びっくりしたわ。一目惚れした彼にしか叫んでいないつもりでいたのに……。
隣にいた友達にどうしてみんなこっちを見たのか聞いてみたら
「そりゃそうでしょ。『おーい。おーい!そこの生徒〜』なんて言えば皆んな見るっしょ!バカやってないで萌香も頭下げて!!」
そう言って友達は屋上から皆にペコペコと頭を下げていたわ。
その後すぐに屋上に来た生徒指導の先生に腕を引っ張られ指導教室に連れて行かれたのは友達の方だった。
友達は声が枯れるまで抵抗しあたしの名前を叫んでいた。
『先生!私じゃないって〜〜!!萌香だって!!聞いてよ〜」
警察に捕まった時の犯罪者のような姿だとあたしは思うのだった。
End
お題『始まりはいつも』
始まりはいつも突然やって来る。
誰も予想なんてできない。
そう、【恋】の始まりはいつもひとりでにはじまるの。
あたしの恋はいつもビジュアルから始まってしまう。
「あの人かっこいい〜」
昼休み学校の屋上でクラスメイトの友達と昼食を食べながらグランドを眺めていたら誰かも分からない生徒を発見しあたしの目に止まった。
End
お題『すれ違い』
見間違うはずがない、この絵画と同じ見た目は白いドア。だけどドアの下の方に黒いシミが付いているのが俺の部屋である証だ。
小学生の時、図工の授業で絵を描いていた。授業終了のベルが鳴り担任が
『時間内に完成出来なかった人《生徒》は宿題です。持って帰って家で完成させてから“明日“提出して下さ〜い』
と生徒全員に聞こえる程の大声で言った。
俺は完成することが出来なかったので宿題になってしまった。家で色付けを水彩絵具していた時、汚れた水を洗面所で替えようとして何かに足首が引っ掛かり転んでドアの方に水をぶちまけた。その結果がドアの下に付いたシミである。
どうして俺の部屋が描かれている?
複製画とはいえ、〔白い扉〕という作品に黒いシミなんて描かれていないのを俺は思い出した。
その絵から黒く伸びた影が出てきた。それはだんだん伸びていき、手の形となって俺の目の前に現れ、Tシャツを掴んだ、払おうとしても影の力が強く俺は絵の中に引き込まれてしまった。
目が覚め辺りを見渡すとそこは俺の部屋だった。
「夢だったのか!?」
ドアを開け部屋を出た瞬間、黒い影が俺の横を通った。そのすれ違いざま影はボソっと呟く。
『良かった……間に合った。お帰りなさい。過去のオレ』
End