お題『秋晴れ』
探索した結果。オブジェ部屋にはマネキン(崩れてしまった)や石像の他に乱雑に床の上に置かれた絵画をいくつか発見した。
一つ一つ絵画を見ていくと……。
有名な画家が描いた作品であることがわかった。
黄色い背景に黄色の花瓶その花瓶の中に、数本の向日葵が描かれ、作品全体がほぼ黄色い〔ひまわり〕や秋晴れを感じさせる〔秋、積みわら〕などが見つかった。
本物であるはずがない。本物は世界一厳重な防犯セキュリティーが設置された場所に保管されているに違いないと俺は思っている。どれも複製画だろう。
それでも作品(絵画)を使ってドアを作るには無理あるように感じる。
悩んでいると、他の絵画中で一際大きいサイズの絵画を見つけた。
俺は少しづつゆっくりゆっくりと【東】の壁へ寄せていく。【西】側に乱雑に置かれた他の絵画はとりあえずマネキン達のいる【北】側へ追いやることにしよう。二つ、三つと小脇に抱え移動させていく。
最後の一つ青紫が綺麗で月がとても映えるドビッシー作〔月の光〕は【西】側の壁の方へ残したままにした。
ようやく片付いた一際大きい絵画を【東】の壁に立てかける。
白くてまるでそこに元々存在していた様に部屋に溶け込んでいる。
ハンマースホイ作の〔白い扉〕もうこれがドアの代わりでいいじゃないかと思った。
俺は自分の目を疑った、絵画の中央に開いた扉の先に小さく描かれた部屋が見える。
それは身に覚えのある部屋だった。
End
お題『忘れたくても忘れられない』
「えっ!?は?どういうこと!?」
突然、光出した右手は少しづつ身体全体を覆っていた。ゲームに勝った者に渡される賞品か?
だとしたらドアが欲しかったよ。
強制参加とはいえマネキン達とだるまさんがころんだゲームをしたことは忘れたくても忘れられない不気味で不思議な体験であることは間違いないだろう。
静けさの戻ったオブジェ部屋を久しぶりに俺は探索し始めた。
久しぶりという感覚は可笑しいはずなのに、ついさっきの出来事から今だ興奮状態の解けない俺の脳がそうさせている。
未来からの手紙に書いてあった俺の言葉を思い出せ。
『冷静になれよ!』
そうだ、冷静を取り戻せ。
俺は目を瞑り深呼吸した。すると身体を覆っていた光は身体の中に入っていきあっという間に消えてなくなった。
あの光は一体なんだったのだろう。RPGでいうバリアーみたいなもんかな等と中学2年生じゃない、21歳の俺は中二病なことを考えていた。
End
お題『やわらかな光』
微動だにしない。あれから数分間正確な時間はわからないが、俺の感覚では約10分経った頃、相手がマネキンだけあって動かない。
俺とマネキンの忍耐力は五分五分かもしれない。
2つめの奥手を使うとしよう……。
俺は深く深呼吸して、自分を落ち着かせた。
壁に向き直しそして浅く空気を吸い込み
「だるまさんがころんだ」
と“早口“で言い終わると同時にすぐマネキンの方へ振り向く。
マネキンは右足を一歩前に出していた。右手が左足首を掴もうして左足が少し床から浮いていた。グラグラと揺れるカラダ、一歩踏み出した右足で、頑張ってバランスをとっているが、その右足さえもフラついている。
俺は勝利を確信し、人差し指をマネキンに向かって指差しゲーム終了の言葉を放つ。
「お前、さっきから動いてるんだよ!観念しやがれ!!」
バラバラと胴体と頭、手足が崩れ出す最後のマネキン。
「よっしゃぁ」
ガッツポーズを取った俺の右手が突然月の光のようなやわらかな光を放ち出した。
End
お題『鋭い眼差し』
鋭い眼差しで俺はマネキンを睨みつける。
一歩でも動けばあいつの負けだ。
目を逸らすな、じっと見続けるんだ。
先ほど言った奥の手とは俺の中で2つある。
一つは今実行中だ。
じっと相手の目を何秒、いや何分間も見つめること。
だるまさんがころんだゲームでコレをやられたら、相手に相当なストレスというダメージを与えることができる。ましてや変なポーズをとっているとなお効果抜群だ。
ゲームとは関係ないが生きている人間で見つめられる側に耐えれる人はそう多くないと俺は思っている。
実際、俺が他人から見つめられたらせいぜい5秒程度が限界だ。それ以上はどうしてか恥ずかしくなって目を逸らしてしまう。
話をゲームに戻そう、相手はマネキンだ。
何分間でも耐えられてしまいそうだな。
俺の【忍耐力】とあいつの【忍耐力】どっちが上だろう……。
End
お題『高く高く』
部屋の隅に高く高く積み上げられる、
胴体と頭、手足がバラバラになったマネキン達。
だるまさんがころんだゲームの攻略がわかった俺は1体、また1体と次々に動いたマネキン達を指差していく。
残り1体になったマネキンと俺の一騎打ち。
もうすぐ勝負が決まる。
「だ〜るま〜さんが〜〜ころ〜〜んだ!!」
振り向くとマネキンは俺に近づきながら自らの左腕を外していた。
あのマネキン何をしようとしているんだ。
壁側に向き直しもう一度
「だ〜るま〜さんが〜……」
ビュン!?
言い終わる前に俺の横を何かが飛んできた。
そして壁に刺さっている。
「なんだよ!?危ねぇな!……う、腕」
振り向くとマネキンの左腕がない。
あいつ自分の腕を投げやがった!?
自分が最後だと理解しているのかマネキンはルールを無視してでも勝ちたいらしい。
「そっちがその気なら俺には奥の手があるんだよ!」
そう言いながら俺は高く上げた手をゆっくり下ろしてマネキンに向かって人差し指を差した。
End