よつば666

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お題『やわらかな光』

 微動だにしない。あれから数分間正確な時間はわからないが、俺の感覚では約10分経った頃、相手がマネキンだけあって動かない。
俺とマネキンの忍耐力は五分五分かもしれない。
2つめの奥手を使うとしよう……。

俺は深く深呼吸して、自分を落ち着かせた。
壁に向き直しそして浅く空気を吸い込み

「だるまさんがころんだ」

と“早口“で言い終わると同時にすぐマネキンの方へ振り向く。
マネキンは右足を一歩前に出していた。右手が左足首を掴もうして左足が少し床から浮いていた。グラグラと揺れるカラダ、一歩踏み出した右足で、頑張ってバランスをとっているが、その右足さえもフラついている。

俺は勝利を確信し、人差し指をマネキンに向かって指差しゲーム終了の言葉を放つ。

「お前、さっきから動いてるんだよ!観念しやがれ!!」

バラバラと胴体と頭、手足が崩れ出す最後のマネキン。

「よっしゃぁ」

ガッツポーズを取った俺の右手が突然月の光のようなやわらかな光を放ち出した。

End

10/17/2024, 8:15:00 AM