お題『忘れたくても忘れられない』
「えっ!?は?どういうこと!?」
突然、光出した右手は少しづつ身体全体を覆っていた。ゲームに勝った者に渡される賞品か?
だとしたらドアが欲しかったよ。
強制参加とはいえマネキン達とだるまさんがころんだゲームをしたことは忘れたくても忘れられない不気味で不思議な体験であることは間違いないだろう。
静けさの戻ったオブジェ部屋を久しぶりに俺は探索し始めた。
久しぶりという感覚は可笑しいはずなのに、ついさっきの出来事から今だ興奮状態の解けない俺の脳がそうさせている。
未来からの手紙に書いてあった俺の言葉を思い出せ。
『冷静になれよ!』
そうだ、冷静を取り戻せ。
俺は目を瞑り深呼吸した。すると身体を覆っていた光は身体の中に入っていきあっという間に消えてなくなった。
あの光は一体なんだったのだろう。RPGでいうバリアーみたいなもんかな等と中学2年生じゃない、21歳の俺は中二病なことを考えていた。
End
お題『やわらかな光』
微動だにしない。あれから数分間正確な時間はわからないが、俺の感覚では約10分経った頃、相手がマネキンだけあって動かない。
俺とマネキンの忍耐力は五分五分かもしれない。
2つめの奥手を使うとしよう……。
俺は深く深呼吸して、自分を落ち着かせた。
壁に向き直しそして浅く空気を吸い込み
「だるまさんがころんだ」
と“早口“で言い終わると同時にすぐマネキンの方へ振り向く。
マネキンは右足を一歩前に出していた。右手が左足首を掴もうして左足が少し床から浮いていた。グラグラと揺れるカラダ、一歩踏み出した右足で、頑張ってバランスをとっているが、その右足さえもフラついている。
俺は勝利を確信し、人差し指をマネキンに向かって指差しゲーム終了の言葉を放つ。
「お前、さっきから動いてるんだよ!観念しやがれ!!」
バラバラと胴体と頭、手足が崩れ出す最後のマネキン。
「よっしゃぁ」
ガッツポーズを取った俺の右手が突然月の光のようなやわらかな光を放ち出した。
End
お題『鋭い眼差し』
鋭い眼差しで俺はマネキンを睨みつける。
一歩でも動けばあいつの負けだ。
目を逸らすな、じっと見続けるんだ。
先ほど言った奥の手とは俺の中で2つある。
一つは今実行中だ。
じっと相手の目を何秒、いや何分間も見つめること。
だるまさんがころんだゲームでコレをやられたら、相手に相当なストレスというダメージを与えることができる。ましてや変なポーズをとっているとなお効果抜群だ。
ゲームとは関係ないが生きている人間で見つめられる側に耐えれる人はそう多くないと俺は思っている。
実際、俺が他人から見つめられたらせいぜい5秒程度が限界だ。それ以上はどうしてか恥ずかしくなって目を逸らしてしまう。
話をゲームに戻そう、相手はマネキンだ。
何分間でも耐えられてしまいそうだな。
俺の【忍耐力】とあいつの【忍耐力】どっちが上だろう……。
End
お題『高く高く』
部屋の隅に高く高く積み上げられる、
胴体と頭、手足がバラバラになったマネキン達。
だるまさんがころんだゲームの攻略がわかった俺は1体、また1体と次々に動いたマネキン達を指差していく。
残り1体になったマネキンと俺の一騎打ち。
もうすぐ勝負が決まる。
「だ〜るま〜さんが〜〜ころ〜〜んだ!!」
振り向くとマネキンは俺に近づきながら自らの左腕を外していた。
あのマネキン何をしようとしているんだ。
壁側に向き直しもう一度
「だ〜るま〜さんが〜……」
ビュン!?
言い終わる前に俺の横を何かが飛んできた。
そして壁に刺さっている。
「なんだよ!?危ねぇな!……う、腕」
振り向くとマネキンの左腕がない。
あいつ自分の腕を投げやがった!?
自分が最後だと理解しているのかマネキンはルールを無視してでも勝ちたいらしい。
「そっちがその気なら俺には奥の手があるんだよ!」
そう言いながら俺は高く上げた手をゆっくり下ろしてマネキンに向かって人差し指を差した。
End
お題『子供のように』
子供のようにマネキン達が俺とだるまさんがころんだゲームを楽しでいるような感じは……。
1ミリもない、そりゃそうだろう。
マネキンだもんな。無表情から急に笑顔になっていたらそれはホラーなんだよ。
いや、勝手に動いている時点でもうホラーか(苦笑)
数を数えては振り返る、そして動いた人を指名する。
指名された人は鬼の側に行き捕まったことになる。
ひとりまたは数名の度胸ある人が鬼の背中にタッチし、捕まった人を鬼の側から解放するという、簡単なルールだ。
しかし、この場合…マネキン達一人ひとりに名前はないので、どうしよう。指差しでいいのか?
何か個別判断できそうなものはと、マネキンから目を離した瞬間だった、一体のマネキンがスーッと動いたのを俺は横目で見逃さなかった。
「お前、動いたよな」
そう言って人差し指を動いたマネキンへ向けた。
するとマネキンはガタガタと震え出し、その場で胴体や頭、手足がバラバラに崩れた。
元に戻る気配のないマネキンをみて、子供のようにゲームを心から楽しんでいたのは俺の方だったようだ。
End