誰かにとって当たり前なことが
自分にとってはそうでないように
私にとっての当たり前も
人にはどうでもいいことだったりして
その埋めようのない差異にひるんだり
失望することだってあるかもしれませんが
人と自分は違って当たり前だということを
当たり前に知っておくべきなのです
#私の当たり前
ぽつりぽつりと遠くの家々に灯がともり、時おり電車の窓の四角い明かりが連なって、右へ左へ流れていきます。
音もなにも聞こえませんが、あそこにはちゃんと人がいて、自分とはなんの関係もない人なのですが、確かに生きているのです。
自分と同じように息をしているのです。
考えてみると不思議なものですね。
一生懸命働いた人や、勉強した人。病気の人を見舞う人、病院帰りの人。嬉しいことがあった人、悲しみに沈む人。
わたしはどれでもない人ですが、あしたはこのどれかかもしれません。
ぽつりぽつり、町の明かりが増えていきます。夜のはじまりです。
今日という一日が閉じていきます。
この静かな夜が、安らぎのひとときとならんことを。
#街の明かり
あなたの力になれることがわたしの願いです。
友よ。あなたが無類の虫好きだから、わたしはファーブル昆虫記を読んで苦手な虫を克服しようとしました。
あなたのその風変わりな気質が好ましく思えたからです。
知れば知るほど驚きしかない命の神秘なる営みは、わたしを新しい世界にいざなってくれました。
他者によって自分を変化させられることが、わたしにはとても尊いことに思えました。
若い頃、心の通い合う友ができなかったのは、自分のことしか見えていない未熟な魂であったからではなかったでしょうか。
自分よりもまず相手の役に立ちたいと、相手の益になることを考える。それが愛です。
そういう生き方を目指すようになってから、少しづつわたしの人生は動きはじめました。
友よ。まだ知り合って間もないわたしの友。
少ない思い出の数がこれからもっと増えていくことを、わたしは心静かに願っているのです。
#友だちの思い出
眠れなくて身を起こす
窓辺に猫がいる
窓を開け風を入れる
夜の闇が広がっている
東の空に星がある
煌々として木星がひとつ
寝静まった町に
やけに強く光る
おまえには見えるか?
猫にたずねる
猫は動かない
窓の向こうを見つめたまま
ぴくりともしない
その目に同じ夜が映っているか
それが知りたい
猫は動かない
哲学者のように
押し黙っている
#星空
自分の無力を真に知ることは
光を知ることの条件である
すべて与えられたもののみ
それのみで人は生きる
失うのではない
もともと持ってはいないのに
なくなったことを嘆くのはよせ
偶然のうちに光が生まれたのなら
命が芽生えることのどこに意味を求めるのか
なぜ人は
光のはじまりを知らず愛でるのか
山を 花を 生き物を 人間を
自分のものとして
満足して
光を知らないという虚無と
人は永遠に向き合っていく
自分をごまかすことに気づかず
どこへ向かうのかもわからぬままに
#神様だけが知っている