「阪神淡路大震災」
祖母は九州に住んでいる。
阪神淡路大震災の日、
祖母は家の寝室で寝ており、襖がミシミシといい、ほんの少し揺れたそうだ。
関西で起きた地震の揺れが九州にまで伝わるとは恐ろしい。地震が起きた際に生き残れるように備えをしたい。
幸せは誰かが与えてくれるのではない。
自分が幸せと思うか思わないか、自分次第。
風邪
お母さんはいつも弟を一番に大切にし、可愛がる。
お母さんもお父さんも男の子が欲しかった。
でも最初に生まれたのは女である私だ。
それなりに育てられ、可愛がられた。
弟が生まれるまでは、
私が生まれた5年後に弟が生まれた。
お母さんの瞳に私は映っていない。
私以上に可愛がられている弟を見るのはつらい。
小さいながらに傷つく。
私はお母さんが大好きなのに。
家事を手伝っても、小学生になって、100点をとっても。
お母さんの瞳に映るのは弟だけだ。
どうしたら私を見てくれるの?
私だけを見てくれるの?
ある日、そんな夢を叶えることができた。
私は風邪を引いて、お母さんはずっと看病をしてくれた。
風邪で?と思うかもしれない。
私は風邪をこじらせたのだ。
咳が止まらなくなり、高熱が続いた。
お母さんは私だけのものになった。
弟はおばあちゃんの家に預けられた。
お父さんは、私にバニラアイスと青リンゴのゼリーを買ってきてくれた。私だけのために。
弟が生まれたあとに、こんなに幸せを感じることがあっただろうか。独占できている、高揚感。愛情を感じる。お母さんは心配そうな顔をしている。お母さんの瞳に映っているのは私だ。私だけしか映っていない。
あぁ、幸せだ。
一週間も経つと、だんだん回復してきた。だめだ。こんなのだめだ。私は、お風呂で冷たいシャワーを浴び、薄着の格好をしてベランダに出た。咳がまたひどくなってきた。胸のあたりがジンジンする。
痛い。でもお母さんのあの顔を思い出すとこんな痛み耐えられる。絶対に私だけのものにしてみせる。
夢と現実
夜空に星が満ちている。
昔に比べると少なくなってしまったが、周辺に建物の少ない僕の家からはまだたくさん見ることができる。
部屋の窓からは冷たい風が入ってくる。
冬の風は心にしみる。泣きたくなる。
虚無感を感じてしまう。
そしてさみしい心を紛らわせるために叶わない夢を頭の中で描いてしまう。
お母さんとご飯を食べる僕
お母さんが僕に向かって「美味しいね」と言ってくれ、「うん!」と答えている僕
お母さんに頭を撫でられている僕
色々と頭の中で描いているとそれが現実になったのではないかと錯覚し一瞬だけ嬉しい気持ちになる。
でも現実は現実のままだ。
絶望しか待ち受けていない。
今日は帰ってくるかな。
新しい男の人を連れてくるのかな。
ベッドのシーツにいつの間にかしがみつき、目が熱くなってきた。
「1日だけでもお母さんを独り占めできますように」
そう願いながら目を瞑った。
「あなたとわたし」
古い記憶が蘇る。
父「竜介、、プレゼントだ」
僕「なにー?」
僕「わ!これ僕が欲しかった怪獣だ!いいの?」
父「あぁ!母さんには内緒だぞ!」
僕「ありがと!」
小学校のとき、僕が友達と喧嘩をして落ち込んでいたときの父との会話
父「大きくなったら母さんと千恵を守るんだぞ」
僕「うん!約束する」
夕暮れの帰り道での父との会話
僕「うるせー!!お前には関係ないだろ!」
父「何を言ってるんだ!父親だぞ!!
悩みを一人で抱えるな、なんでも受け止めてやる!」
僕「黙れ!!お前に何が分かる!??」
高校2年生のとき、母は夜遊びを頻繁にするようになった。
ある日、母は、父さんと離婚をして、自称ホストの金髪男と再婚をし、家を出ていった。
中3の妹の千恵は母が大好きだった。ショックがあまりにも大きいみたいで部屋に引きこもるようになった。
僕にとっても、実の母親だ。現実を受けいれられず非行に走った。反抗する僕と、そんな僕が心配な父との会話。
父との時間はとても楽しかった。
楽しい会話も、口喧嘩も、真面目な会話もたくさんした。
すべてが懐かしい。
今はもう、父と会話をすることはできない。
温かくて大きい掌で頭を撫でてもらえることも、
低くて、僕の胸に響く父の声に
励ましてもらえることもない。
病には勝てない。
父は柔道をしていたため、体格がよかった。
父が熱を出したり、風邪を引いている姿もあまりみたことがない。
そんな父が病にかかるなんて、
僕も千恵も思っていなかった。
そして、僕が高校を卒業した春に、
この世を父は旅立った。
「母さんが先に逝けばよかったのに」
こんなこと、思ってはだめだと思うがどうしても思ってしまう。
父さんは僕たちにとっても、周りの人たちにとっても
優しく、いい人だった。
「神様は美しい花を摘みたがる」という言葉があるが
その神様はどこまで我儘で自分勝手なのだろうと思う。
美しい花こそ残すべきではないだろうか。
そんなことを思っても父は戻ってこないことは分かっている。でも悔しい、悲しい。
それでも生きるしかないのだ。
父の優しく、太い声や、怖いが優しい父の顔を思い出すと、飛ぼうにも飛べない。
千恵も、同じなのだろう。
母がいなくなったショックで、
切ろうとして、父に叱られた。あの時の父の顔は忘れられない。それでもいつも、叱ったあとは笑顔の父。
あんな顔を見たら、
千恵も、切ろうにも切れないのだ。
僕たちは父に生かされている。
千恵と二人で生きていくしかないのだ。