風邪
お母さんはいつも弟を一番に大切にし、可愛がる。
お母さんもお父さんも男の子が欲しかった。
でも最初に生まれたのは女である私だ。
それなりに育てられ、可愛がられた。
弟が生まれるまでは、
私が生まれた5年後に弟が生まれた。
お母さんの瞳に私は映っていない。
私以上に可愛がられている弟を見るのはつらい。
小さいながらに傷つく。
私はお母さんが大好きなのに。
家事を手伝っても、小学生になって、100点をとっても。
お母さんの瞳に映るのは弟だけだ。
どうしたら私を見てくれるの?
私だけを見てくれるの?
ある日、そんな夢を叶えることができた。
私は風邪を引いて、お母さんはずっと看病をしてくれた。
風邪で?と思うかもしれない。
私は風邪をこじらせたのだ。
咳が止まらなくなり、高熱が続いた。
お母さんは私だけのものになった。
弟はおばあちゃんの家に預けられた。
お父さんは、私にバニラアイスと青リンゴのゼリーを買ってきてくれた。私だけのために。
弟が生まれたあとに、こんなに幸せを感じることがあっただろうか。独占できている、高揚感。愛情を感じる。お母さんは心配そうな顔をしている。お母さんの瞳に映っているのは私だ。私だけしか映っていない。
あぁ、幸せだ。
一週間も経つと、だんだん回復してきた。だめだ。こんなのだめだ。私は、お風呂で冷たいシャワーを浴び、薄着の格好をしてベランダに出た。咳がまたひどくなってきた。胸のあたりがジンジンする。
痛い。でもお母さんのあの顔を思い出すとこんな痛み耐えられる。絶対に私だけのものにしてみせる。
12/16/2024, 12:16:26 PM