変なこだわりが強すぎて恋愛が出来ない。外でお付き合いするのはいいけれど、プライベートには関わられたくない。自分の場所は自分だけのものでないと気がすまない。
私だけの空間に他人が土足で踏み込んでくるのが何より嫌だ。だから時々街中で見かけるカップルを見ると、ちょっぴり憧れはするけれど、なんとなく、あまり深入りされたくないなと思ってしまう。
存在意義は遠い記憶。あの頃は誰もが自分に優しかった。ココが自分の居場所だと自信を持って言えた。自分にも人にも信頼があった。誰からも温かく迎えられて、活躍ができた。
それが今や、私の周りに人はいない。原因はよく分からない。ほんの些細なことだったような気がする。記憶にすら残らないほど小さなこと。しかしそこから私の生活は全く変わってしまった。誰もが皆私を避け、口も効かなくなったと思えば、陰で私を噂話のネタにしてあざけている。何をしても結果にならず、そもそも誰も私を見ない。ここにいる意味がもはや私にはなくなった。
充実の中で生きられていた頃の思い出を名残惜しく抱えて、今日もベッドにすがりつく。
全身が細胞単位で解けて分解される。粒子が泡のように空へ吸われていき、青を映す水蒸気と一体化する。存在は実体を忘れ概念になる。自我はない。感情もないから恐れもない。気がつけば現実から消えている。誰の記憶からも、痕跡残らず消えている。私はエラーだった。初めから修繕される筋書きだった。未練ごと上書きして消してしまおう。
誰よりも可哀想で、誰よりも情けなくて、誰よりも自分の劣等感を信じて、誰よりも自分を分かっているつもりでいるという、無意味で面倒な優越感。
一件のLINEで意識が戻る。
外はまだ明かりすら見えない。
夢から戻りかけの重い瞼で目を凝らす。
「死にたい」
一言だけの通知。
昼間あれだけ喋っているはずの相手が、この頃やたらしつこくなった。
言うことといえばこの手の弱音ばかり。
いい加減うんざり。
もう面倒でしかないから関わるのを辞めたい。
明日の朝、一番の目覚めついでに封鎖してしまおう。